Archive for the ‘復興・技術・未来’ Category
2020/10/01【福島の事故を教訓に世界一安全な原発を】
福島第一原発の事故をめぐる集団訴訟で、2審で初めて仙台高裁が国の責任を認める判決を言い渡しました。
「避難指示が適切だったのか」などといったそもそもの議論はあるものの、損害を被った方々に適切な補償をすることは当然です。
一方で、福島第一原発の事故を例にとって、「原発の安全性に“絶対”はないので、原発は廃止すべきだ」と考える方もおられます。
こうした考えに基づく反原発マスコミなどは、今回の判決を好意的に受け止めています。
ただ、今回の判決では「東日本大震災の津波を予見できた可能性」と「その予見に基づけば事故を回避できた可能性がある」ことを認めています。
よって、当時の技術力であっても適切な対策を講じていれば福島の原発事故は起こらなかった可能性があるということです。
つまり、「福島の事故をもって原発はどんなことをしても安全ではない」という根拠とすることには、必ずしもならないということになります。
海外の情勢や気象条件に左右されず安定的に発電できる原発は、資源小国である我が国にとって、エネルギー安全保障上、手放してはならない電源です。
ですから、福島の事故を教訓に原発を廃止するのではなく、福島の事故を教訓に世界一安全な原発を作ることこそ、我が国に課せられた役目なのではないでしょうか。
2020/07/30【技術ノウハウのディジタル化は慎重に】
IoT、インダストリー4.0など、製造業のディジタル化の流れが加速しています。
ディジタル化で、効率化が進むとともにイノベーションも容易になるため、この流れに乗り遅れると未来は無いかのように言われることがあります。
実際、高度なノウハウを持ったベテラン技術者が、高齢化のためにリタイヤしていく中で、今まで再現不可能と思われていたノウハウを細かく数値化し、ネットワークやAIと組み合わせることで、入社間もない技術者でもベテランと同等の仕事をこなせるようになり、人手不足の解消に繋がったという話も聞きます。
しかし、少し立ち止まって冷静に考えてみる必要があります。
あらゆる情報をディジタル化するということは、ネットワークを介して情報が流出する危険性を常に頭に入れておかねばならないからです。
ベテランのノウハウを継承できたと喜んだのもつかの間、数年後、中国の知らない会社が全く同じものを大量に製造していたなんてことにもなりかねません。
製造技術のディジタル化は、ハッカーや産業スパイにとっても願ったりかなったりなのです。
事実、コロナ禍でテレワークが加速する中、世界中でサイバー被害が急増し、日本でも多大な被害を受けた企業もありました。
例えば、6月にはホンダがランサムウェア(重要データを暗号化するなどして、その解除に身代金を要求するマルウェア)とみられる攻撃によって、各国の拠点のPCがダウンして、工場からの出荷が停止するといった被害がありました。
日本には、一子相伝という言葉がありますが、非効率的に見える伝統的なノウハウ継承にもメリットがあります。
特に、どこに中国製のネットワーク機器やアプリケーションが潜んでいるか分からない状況では、メリットだけを求めてディジタル化を闇雲に急いではならないのではないでしょうか。
2020/06/12【原発再稼働、自治体の裁量を超えているのでは!?】
福島第一原発の事故原因を検証している新潟県の技術委員会は、事故の原因を2通り考えられるとする報告書の内容を決めました。
1つ目は、東電が主張する「津波であった」とする考え方で、2つ目は、技術委員会の委員が主張する「地震など津波以外が否定できない」とする考え方です。
確かに、1号機では、津波到達前に非常用交流電源が喪失した可能性がありますが、水蒸気爆発など重大な事故に至った根本原因は、国際原子力機関も指摘している通り「津波」であったことは明らかです。
にもかかわらず、結論として両論を併記する新潟県の技術委員会の背景としては、純粋に科学的な知見を示すというよりは、同県内にある柏崎刈羽原発の再稼働を、できるだけ妨げたいという思惑が見え隠れしています。
しかし、今回のコロナ禍で浮き彫りになったように、あらゆるものを国内で自給できるようにすることは我が国とってたいへん重要です。
エネルギーもその一つであり、原発の再稼働の可否判断は一自治体の裁量を超えているように思います。
原発の安全性の確保は言うまでもありませんが、有事対応など必要時には国が再稼働の可否を判断出来るようにすべきではないでしょうか。
20200531【宇宙貿易の時代が来る!?日本の宇宙開発に期待】
米国の民間企業スペースX社が開発した宇宙船が、国際宇宙ステーション(ISS)への有人宇宙飛行に成功しました。
最近では、いくつかの民間企業が宇宙開発に乗り出していますが、ISSへの民間企業による有人飛行はエポックメイキングな出来事と言えるでしょう。
今回は技術的な立証の意味合いが大きいものの、今後、宇宙ビジネスで利益を生み出すことができれば、民間企業の参入が増えるとともに、資金調達も容易になり、益々宇宙開発が加速するものと思われます。
日本でも、民間企業による宇宙開発が行われていますが、米国に比べるとまだまだ事業規模は小さいですから、日本でも次世代の基幹産業の一つとして成長させるために、一段の政府の後押しを期待したいと思います。
そして、人類がもっと宇宙に進出して、時がたてば、宇宙人との「宇宙貿易」といった時代が来るかもしれません。
コロナ禍にあって暗いニュースが続きますが、こうした希望の抱けるニュースが増えることを願いたいと思います。
2019/12/16【災害に備え空中消火機の導入の検討を】
報道によれば、首都直下型地震の危険性が、改めてクローズアップされています。
首都直下型地震は、今後30年に70%の確率で起こるとされ、最悪の場合、死者2万3千人、経済損失95兆円と試算されています。
現代の地震学で地震の発生を正確に予想することはできないので、必要以上に恐れる必要はないと思いますが、万一に対する備えを整えておくに越したことはありません。
死者の多くは、火災によるものと考えられています。
広範囲で同時多発的に火災が発生すると、消火や延焼防止が事実上できなくなるからです。
そこで、考えられるのが空中消火機の導入です。
空中消火機は、空中から水や消火剤を散布する航空機のことです。
日本では、主に山林火災の際にヘリコプターを使って行われていますが、ヘリは搭載量が少ないうえに、火災による強い上昇気流の中では運用が困難なので、その効果には限界があります。
よって、現在、海上自衛隊に導入されている救難飛行艇「US-2」を空中消火機に改造する検討を製造メーカが行っている模様ですが、合わせて、米国などと同様に大型の固定翼機を改造することも検討してはどうでしょうか。
仮に国産機を改良するのであれば、ウェポンベイを持つ哨戒機「P-1」やカーゴドアを持つ輸送機「C-2」が有力かもしれません。
その際、都市上空からの空中消火には、地上にいる人への影響も心配されますが、他に消火手段がない状況では、惨事の拡大を食い止める手段として検討をする余地があると考えます。
災害は、日本中どこで起こり得ます。
国民の生命や財産を守るために防災能力を高めておくことは大変重要です。
そして、防災能力の向上は、我が国の国防に資するということも忘れてはなりません。
2019/10/14【再認識された防災インフラの重要性】
台風19号は東日本を中心に甚大な被害をもたらしました。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
被害の中でも豪雨に伴う河川での被害が目立ち、国交省は10の河川で堤防が決壊し、77の河川で越水が起こったとしています。
数十年または百年に1度と言われるような豪雨は被害想定が難しいものですが、仮に、「もう少し堤防が強固であったなら、もう少し堤防が高かったなら、河川改修で流れを緩やかにしていたなら」、被害を防げた場所があった可能性があります。
民主党政権時の事業仕訳の象徴だった群馬県の八ッ場ダムも、今回の豪雨で急激に貯水量が上昇し、下流域の河川水位上昇を緩和するために一定の役割を果たしたと見られています。
一時、「コンクリートから人へ」という言葉がもてはやされ、治水事業などのインフラ建設工事は利権政治の温床と思われて軽視されましたが、甚大な被害を目の当たりにするとインフラ建設工事の大切さを改めて認識しました。
ただ、こうした工事には莫大な費用が掛かることも事実です。
ですから、必要なインフラを建設するために建設国債の増発も検討すべきではないでしょうか。
2019/10/06【エネルギー安全保障を最優先に】
関電の経営幹部などが、原発が立地する町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題を、原発の再稼動問題と絡めて議論する動きがあります。
確かに、関電側が受け取った金品の総額は数億円にのぼり、常識とはかけ離れた額ですから、経営陣の倫理観が問われています。
しかし、だからといって「原発を運営する資格がない」ということではなく、経営全般の話のはずです。
要は関電のガバナンスの問題であり、原発の再稼動については、今回の問題とは切り離して、安全が確認された原発は、速やかに再稼動すべきではないでしょうか。
今回の金品の受け取りに関わった関電の幹部に対し責任を問う感情は理解できますが、だからといって、それを理由に脱原発を推し進めてしまうと、日本のエネルギー安全保障が危機に立たされてしまうからです。
再生可能エネルギーの開発はどんどん進めるべきですし、化石燃料による発電の割合も順次下げるべきですが、資源が少ない我が国は不測の事態に備えまだまだ原発を手放してはならないと考えます。
2019/09/13【復旧に合理化の影響はないのか】
台風15号の影響で千葉県内では停電が続き、住民生活に大きな支障をきたしています。
東京電力は、当初の見込みよりも復旧が遅れていることを謝罪しています。
見通しが甘かったと言えばそれまでですが、倒木などによる電力線の断線が予想以上に広範囲に及んでいることは事実でしょう。
復旧に当たる工事関係者の方々は不眠不休で作業しており、たいへん頭が下がります。
ここで、一つ気になることがあります。
それは、東電が進める福島第一原発事故以降の合理化が、復旧に影響を与えていないかどうかということです。
東電では、配電網の工事にあたる施工業者の新規参入を認め、競争原理を導入するなどして合理化を進めていますが、原発の再稼動が進まず経営が安定しない中、普段から手厚い復旧体制を維持することは困難な話ではないでしょうか。
仮に復旧作業にマイナスの影響が出ているのであれば、原発の再稼動の早期実現を含め、今後も想定される災害に向けての検証を行う必要がありそうです。
2019/09/07【ソースコードの提供はパフォーマンス?】
中国の通信機器大手「ファーウェイ」の製品について、米国は安全保障上のリスクがあるとして、政府機関などでの使用を規制しています。
日本政府も事実上、この規制に従っています。
これに対し日本政府は、ファーウェイから「通信機器の制御プログラムの設計図にあたるソースコードを日本側に提供するので実際にリスクがあるか検討してほしい」旨の申し出があったことを明らかにしています。
しかし、提供されるソースコードが実際の製品と同じという保証はどこにもありません。
悪意ある機能を組み込んだソースコードを相手に提供することなどあり得ないので、提供されたソースコードの安全確認をもって、全ての製品の安全が保証されたなどとは到底言えません。
現代の通信機器は大変複雑であるため、どの企業の製品であろうと、ある意味で信頼して使うしかありませんが、中国政府や人民解放軍との関係が深いファーウェイの製品は、その「信頼度」が著しく劣ることは否めません。
従って、日本政府は米国に従って、今後もファーウェイの製品を使用しないことが賢明ではないでしょうか。
2019/08/27【首都圏に電力を供給できる原発を減らしていいのか】
東京電力は、先に、福島第一原発に続いて、福島第二原発の廃炉を決めましたが、建設中の東通原発の稼働が見通せない中で、柏崎刈羽原発が東電唯一の原発ということになります。
その柏崎刈羽原発がある地元の1つである柏崎市長は、6号機、7号機の再稼動を認める条件として、残る1から5号機の廃炉計画を明らかにするよう求めていました。
これに対し、東電は、6号機、7号機が再稼動し、条件が整えば1号機から5号機のうちの1つ以上について、廃炉も想定したステップに入ると正式に柏崎市に通知しました。
東電は、現在、主に火力発電により首都圏に電力を供給しており、原発は、事実上、バックアップ電源の役割を担っています。
将来、再生可能エネルギーの普及も見込まれるものの、福島第一・第二原発の廃炉と柏崎刈羽原発の縮小で、火力発電が困難になるなど万一の際に、首都圏の莫大な電力需要を賄えるのか不安があります。
ですから、国際情勢が不透明感を増している中では、エネルギー安全保障上、首都圏に電力を供給する原発を、そう簡単に減らすべきではないと考えます。