IoT、インダストリー4.0など、製造業のディジタル化の流れが加速しています。
ディジタル化で、効率化が進むとともにイノベーションも容易になるため、この流れに乗り遅れると未来は無いかのように言われることがあります。
実際、高度なノウハウを持ったベテラン技術者が、高齢化のためにリタイヤしていく中で、今まで再現不可能と思われていたノウハウを細かく数値化し、ネットワークやAIと組み合わせることで、入社間もない技術者でもベテランと同等の仕事をこなせるようになり、人手不足の解消に繋がったという話も聞きます。
しかし、少し立ち止まって冷静に考えてみる必要があります。
あらゆる情報をディジタル化するということは、ネットワークを介して情報が流出する危険性を常に頭に入れておかねばならないからです。
ベテランのノウハウを継承できたと喜んだのもつかの間、数年後、中国の知らない会社が全く同じものを大量に製造していたなんてことにもなりかねません。
製造技術のディジタル化は、ハッカーや産業スパイにとっても願ったりかなったりなのです。
事実、コロナ禍でテレワークが加速する中、世界中でサイバー被害が急増し、日本でも多大な被害を受けた企業もありました。
例えば、6月にはホンダがランサムウェア(重要データを暗号化するなどして、その解除に身代金を要求するマルウェア)とみられる攻撃によって、各国の拠点のPCがダウンして、工場からの出荷が停止するといった被害がありました。
日本には、一子相伝という言葉がありますが、非効率的に見える伝統的なノウハウ継承にもメリットがあります。
特に、どこに中国製のネットワーク機器やアプリケーションが潜んでいるか分からない状況では、メリットだけを求めてディジタル化を闇雲に急いではならないのではないでしょうか。