10月
07

2011/10/07 【民主主義発祥の地、社会主義化の末の悲哀】

10月5日、ギリシャ向けの債権が多いフランス・ベルギー系の金融大手デクシアの経営不安に対して、両国政府が救済策をまとめました。

ギリシャの債務問題に端を発したユーロ圏の経済の混乱ですが、現実の欧州内の金融システムに危機が波及してきた格好です。

6日には欧州中央銀行が、政策金利を年1.5%で据え置くと決めました(※:10月6日付日本経済新聞http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C9381959FE2E4E2E7EA8DE2E4E3E2E0E2E3E39F9FEAE2E2E2)。

当初、ギリシャなどの債務危問題が金融システム不安や景気後退を招く懸念から、政策金利を引き下げるとの見方もありましたが、域内の物価上昇の圧力に配慮したものととらえられています。

欧州中央銀行は難しいかじ取りを迫られています。

一方、当のギリシャ政府は、財政赤字削減策の具体策を打ち出さないと、国際金融支援が得られないことから、不動産特別税の導入を可決しました。

しかし、ギリシャ国内では、昨年から政府の緊縮財政に対して暴動やストライキが頻発しています。

先月の15日、16日には、2日間で1万人以上のベテラン公務員が辞表を提出して大騒ぎになっています。

退職金が大幅にカットされてしまう前に、退職金を受け取って辞めてしまおうという発想からですが、こうした発想がギリシャを危機に陥れた本質のように思われます。

ギリシャでは、長年にわたって歴代政権が有権者の支持拡大を目論み、雇用確保や利益供与のために公務員を増やし続けてきました。

メディアによって異なりますが、ギリシャの公務員数は全人口の1割(日本は約3%)という数字もあれば、労働人口の4分の1という数字もあるように、ギリシャの公務員数は世界有数です。

今回のギリシャの公務員たちの行動は、国家の危機の最中に敵前逃亡するようなものです。

27日も、地下鉄とバスの運転手によるストライキが起きたことからもわかる通り、年金支給額の引き下げや公務員削減を進めなければならないにも関わらず、ギリシャ政府と国民の間には深い溝が存在します。

現代の民主主義の発祥の地ともいえるギリシャが社会主義化し、このような衰退の姿を見せていることは皮肉に感じられます。

債務危機の可能性は、ポルトガルやイタリアも秘めています。

ユーロ圏の通貨政策の様々な弊害が顕在化している中で、このままでは、ギリシャ危機を回避したとしても、欧州は景気後退を余儀なくされてしまいます。