7月
16

2011/07/16 【閣内ガタガタ、勇み足の「脱原発宣言」!菅首相も修正】

【首相の「脱原発」総合的なエネルギー政策を示せ】2011年7月16日 読売社説より

国の浮沈にかかわるエネルギー政策を、一体どう考えているのか。

菅首相は、記者会見で「脱原発依存」を声高に主張しておきながら、批判を浴びるや、個人的な考えだと修正した。

首相の迷走が与野党や経済界、原発立地自治体などに混乱を広げている。

政府の方針ではないと閣僚懇談会で確認された以上、首相の理想論に振り回される必要はない。

政府と与野党は、東日本大震災後のエネルギー政策について地に足のついた議論を始めるべきだ。

そもそも、退陣を前にした菅首相が、日本の行方を左右するエネルギー政策を、ほぼ独断で明らかにしたこと自体、問題である。

閣僚や与党からさえ、反発の声が一斉に噴き出したのは、当然だ。

首相は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、脱原発にカジを切ることで歴史に名を残そうとしたのだろう。

だが、その発言は、脱原発への具体的な方策や道筋を示さず、あまりに無責任だった。

首相は、消費税率引き上げや、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加などを掲げ、実現が危ぶまれると旗を降ろしてきた。

同様の手法のようだが、今回は明らかに暴走している。

首相は、原発の再稼働について、安全評価が不十分とし、ストレステスト(耐性検査)を条件に加えた。最終的には首相、経済産業相ら4閣僚で判断するという。

法律や制度を軽視し、思いつきで新たなルールを持ち出す。

民間の東電主体で被害救済を進める法案を国会に提出する一方、それとは矛盾する「原発事業の国有化」の検討を示唆する。

「政治主導」をはき違えた、浅慮そのものと言っていい。

首相発言で最も問題なのは、当面の電力不足への危機感が決定的に欠けていることだ。

首相は「国民や企業の理解と協力」で対応可能と言うが、理解に苦しむ。

東電と東北電力はすでに15%の電力使用制限を実施し、一般家庭には節電を呼びかけている。

それに加えて、8月末までに全国で5基の原発が定期検査で停止し、500万キロ・ワットの供給力が失われる。

原発を再稼働させないと来春までに全原発が停止する。

首相は、当座の電力源として企業の自家発電など「埋蔵電力」を当て込んでいるらしい。だが、電力不足の穴埋めに使えるのは原発1~2基分に過ぎないという。

全54基の原発が止まるとどうなるか。

民間調査機関には「国内総生産(GDP)が14兆円以上減少」「50万人が失職」「発電コストは4兆円増加」との予測もある。

企業は工場を海外に移転し、産業の空洞化が加速するだろう。

原発の再稼働を急がないと、懸念はやがて現実となる。

首相は、脱原発への、夢のような構想を語っている場合ではない。中長期的なエネルギー政策の見直しも急務だ。

原発事故に対する国民の不安、原発への不信感を考えれば、原発増設は従来の計画通りには進められまい。

経済成長に必要なエネルギーをどう確保するのか、専門家を交えた議論を深め、新たな戦略を練る必要がある。

首相は太陽光や風力など再生可能エネルギーを有望視している。

だが、水力を除けば総発電量の約1%しかない自然エネルギーに過大な期待は抱けない。

太陽光パネルや発電用風車を置く適地の確保やコストなど難題が山積している。

自然エネルギーによる発電が普及することは望ましい。だが、電気料金が上がり、国民や企業に重い負担がかかる懸念もある。火力発電も含め、電力供給の望ましい組み合わせを模索すべきだ。

原発事故後も、多くの国は原発の安全性を高めた上で活用する方針だ。中国やインドなど新興国は増設を計画している。

日本には、世界の原発の安全性向上に寄与する責任がある。

脱原発に向かえば、原子力技術が衰退し、科学技術立国もままならなくなる。

日本は「原子力の平和利用」を通じて、核拡散防止条約(NPT)体制の強化に努めてきたが、国際的な発言力も大きく低下するだろう。

ドイツやイタリアのように近隣国から電気を買えない日本が、脱原発でやっていけるのか。

世界では、新興国経済の拡大で、石油などの資源争奪が激化している。

エネルギー安全保障の観点も見落としてはならない。

冷静に現実を直視し、多角的な視点から日本のエネルギー政策を再構築すべきである。

引用、以上。

前回ブログで掲載しました「脱原発5つの間違い」の論点がそのまま反映したような社説でうれしいかぎりです。

本記事が指摘しているように、菅首相は直観的な思いつきのパフォーマンスだけで行動しており、日本の「総合的なエネルギー政策」が欠如しています。

自然エネルギーの推進自体は悪いことではありませんが、自然エネルギーを原発に代替する基幹エネルギーにする試みは、大きな電力不足と電気料金の高騰を招き、日本の産業の国際競争力の低下と空洞化をもたらします。

菅直人首相が昨日15日の閣僚懇談会で、「脱原発」方針は「私個人の考えだ」と認めたように、左翼的イデオロギーから来る菅首相の個人的な信念に過ぎません。

そもそも、太陽光や風力などの自然エネルギーは、日本では国土が狭い上に天候の変動が大きいため、出力が弱く、不安定な上に高コストなため、多大な補助金が出ていながらも、ほとんど育ちませんでした。

菅首相は「再生可能エネルギー法案」を押し通そうとしていますが、経済的合理性に合わない自然エネルギーを、莫大な補助金と高い電気料金によって、基幹電力にしようとする虚しい試みです。

歴史上、経済的自由や経済的的合理性を無視し、特定のイデオロギーに基づいて国を計画・運営しようとする「国家社会主義」的試みは、ことごとく失敗して来ました。

もうここまで来たら、菅首相の「脱原発」を通じた「国家社会主義」を打ち倒して参りましょう!