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2011/07/06 【科学少年の夢、スペースシャトルが惜しまれつつも退役】

1981年から始まったスペースシャトルの飛行は、ちょうど30年を迎えた今年(2011年)7月に幕を閉じることになりました。

私は小学校6年生の頃に毎週壁新聞を作っていました。雑誌「ニュートン」の創刊号から読み、週末は天体観測を趣味にしていた程の科学少年であった私は、毎週のメイン記事をスペースシャトル特集にしていました。いつかは宇宙飛行士になりたいと願いながら・・・。
宇宙への架け橋ともいえるスペースシャトルがいよいよ退役します。

アメリカの宇宙開発における優位性はスペースシャトルの退役によって完全に消失し、国際宇宙ステーションに要員を送り込む有人宇宙船はロシアのソユーズ宇宙船のみとなりました。

スペースシャトルは、宇宙開発はもとより安全保障・軍事と密接な関係にあります。スペースシャトルがこなしたミッションの中には、軍事衛星の軌道投入も含まれており、シャトルの船長(コマンダー)は軍人出身の宇宙飛行士が務めています。

最初のミッションのコマンダーを務めた宇宙飛行士ジョン・ヤングはジェミニ宇宙船、アポロ宇宙船での飛行経験を持つ宇宙飛行士ですが、彼はアメリカ海軍大佐であり、海軍時代はテストパイロットとして数々の速度記録を持っています。

女性初のスペースシャトルのコマンダーを務めたアイリーン・コリンズもアメリカ空軍大佐です。

アメリカには、軍隊があらゆる方面における優秀な人材を育成し、輩出する場ともなっており、政治家においても軍隊における経験を持つ者は多く、海軍大佐であったマケイン上院議員などはその代表格だと言えます。

いずれにせよ、スペースシャトルの退役は、宇宙開発の歴史における一つの時代の終わりと言えます。

アメリカは緊縮財政による宇宙予算削減を進めており、アメリカのスペースシャトルなどの宇宙開発事業からの撤退は、日本にとっては好機でもあります。

これまで、宇宙ステーション計画においても、主導権は米国に握られ、日本は振り回され続けて来ましたが、今後、日本が主導権を持って宇宙開発計画を打ち立てるチャンスでもあります。

日本は「宇宙ステーション補給機HTV(愛称こうのとり)」を手にしており、HTVを有人化できれば、スペースシャトルに代わる地位を占めることができます。

また、小惑星探査機「はやぶさ」の超精密誘導機能が、ミサイル誘導システムに応用できるように、宇宙開発技術は即、日本の防衛技術の高度化に直結することも可能であり、国家プロジェクトとして積極的に進めていくべきです。

関連記事→【シャトル退役「寂しさ乗り越え、日本が重要な役割を」向井千秋氏インタビュー】2011年7月3日 日経より

米スペースシャトルが30年の歴史に幕を下ろす。7月8日(米東部時間)予定の打ち上げを最後に退役する。

日本人初の女性宇宙飛行士としてシャトルに2度乗った向井千秋さんが日本経済新聞記者とのインタビューに応じた。

シャトル退役が科学技術の進歩を滞らせると懸念を示す一方、宇宙開発の将来について「国際協力の枠組みのもとで、日本が重要な役割を担えるように努力すべきだ」と指摘した。

主なやり取りは次の通り。

――アトランティス号を最後にシャトルが引退する。

「寂しいの一言だ。シャトルがあったからこそ、医師だった私が宇宙へ行けた。地上のいろいろな職業の人が宇宙を職場にできるようになった」

「地上と宇宙を何度も往復できるシャトルが築いたヒトの大量輸送時代に、ちょうど私の人生が重なった。幸運にも宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)の飛行士募集が1983年にあり、飛行士に選ばれた。本当にありがたい」

――シャトル退役は宇宙での科学実験などにも影響が出るのでは。

「私がシャトルに乗っていた当時は、宇宙で色々なことを試してみようという『宇宙利用の黄金時代』だった。ヒトや実験機材を大量に宇宙へ運び、宇宙での実験結果をたくさん持って帰れる。ロシアの宇宙船ソユーズは3人乗りで、持ち帰れるサンプル量が多くない。科学技術を推進する観点からも退役は寂しい」

――シャトル退役後、日本はどう宇宙開発に取り組むべきか。

「宇宙開発は一国や一企業でできるほど規模が小さくない。かつては米国と旧ソ連を中心に国威発揚が原動力だったが、今や国際協力は当たり前。国際協力を前提に、企業などが健全な競争をしながら開発に加われる仕組みを政府は作らないといけない」

「有人を含めて日本が単独でできれば理想だが、予算の問題がある。他国と協力しつつも、宇宙開発に欠かせない重要な部分を日本が担えるようになることが大切だ」

「日本には無人の物資輸送機『HTV(愛称こうのとり)』があり、現在はこれで有人宇宙開発に国際貢献している。将来は人が乗れる宇宙船に改良することも選択肢だろう」

「有人宇宙開発では中国やインドが存在感を高めている。国家戦略として、宇宙を柱に産業や教育の振興を考えている。日本は独自で取り組める資金がなくても知恵をうまく使い、日本がいなければできないような重要な仕事を担うための努力が必要になる」

――日本の宇宙政策のこれからの課題は。

「なぜ人は宇宙に行き、生活圏を広げる必要があるのか。そういった根本的な考えや、将来目指す目的地を日本は示していない。海外では、火星に宇宙飛行士を送り込むという大きな絵図を描いたうえで、実現するにはどうすればいいかを様々な要素から研究している。

だからこそ国際宇宙ステーションを実験に利用しようという考えなので、研究者の発想が豊かだ。日本はまず宇宙ステーションをフル活用せよ、などと閉じた考えをしがちで、息が詰まる。目標は高く遠くに持つべきだ」