中国紙の1面にローマ法王庁の国務長官のインタビューが掲載されました(※)。
インタビューでは、同長官が中国を持ち上げた上で、更なる関係改善を進める意欲を示したとのことです。
中国共産党員には信仰が禁じられ、国民には信教の自由が認められていない中国は完全な無神論国家を目指しています。
その中国とローマ法王庁は、司教の任命権をめぐり長年対立してきましたが、昨年、ローマ法王庁側が折れる形で和解しました。
ローマ法王庁としては大局的な観点から和解に踏み切ったつもりなのかもしれませんが、この和解は、中国ではローマカトリックが中国共産党の下に位置することを意味します。
つまり、主なるキリストや天なる父の上に中国共産党があることを事実上認めたようなものです。
これは、キリスト教の信者にとって大いなる失望をもたらし、ローマカトリックの権威を低下させたばかりか、中国のキリスト教徒に対する中国共産党の統治を後押ししたようなものです。
事実、今回のインタビュー記事は、中国共産党の権威づけに利用されていると言っても過言ではありません。
中国では、1千万人以上いるとされるキリスト教の地下教会の信者に対する締め付けが強まっていますし、ウイグルのイスラム教徒やチベットの仏教徒に対する弾圧にも拍車がかかっています。
ですから、ローマ法王庁は、中国共産党に抵抗する信者の心の糧となるべきですが、あろうことかその中国共産党と手を結ぶとはどういうことでしょうか。
信者獲得に向けて14億の人口が魅力的に映ったのかもしれませんが、本来であれば、自由や民主という価値観とともに、信仰という人類普遍の価値観を中国に浸透させることは宗教のミッションであると考えます。
※:5月14日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/world/20190514-OYT1T50148/