5月
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2019/05/07【問われるニュージーランドの安全保障政策】

 産経新聞に「第3列島線」なる言葉が取り上げられていました(※)。

 「列島線」は中国の軍事上の防衛ラインと位置付けられており、従来から言われている第1列島線は、日本列島から台湾、南シナ海に続くもので、同様に第2列島線は、日本列島からグアム、ニューギニア島に続くとされます。

 そして、今回の第3列島線は、概ねハワイからニュージーランドを結ぶもののようです。
 

 これらの列島線は、中国の覇権拡大を表しており、ゆくゆくはそれぞれの列島線の内側を中国の勢力下におきたいという意思が見て取れます。

 こうした中国の野望をとも言える青写真の存在を、我が国をはじめとした民主主義国家は重大に捉えるべきです。
 

 とりわけ第3列島線で影響を受けるのが、ニュージーランドと考えられます。

 ニュージーランドは地政学的に脅威となる国が近隣に無いため、国力に比して軍事力が小さな国の1つです。

 日本と同じ海洋国家でありながら、海軍の戦闘用の主力艦艇としては、フリゲート艦が2隻しかありません。

 駆逐艦に相当する大型の水上艦艇はもちろん、潜水艦も保有していません。

 また、空軍は、今世紀に入り戦闘機部隊を解散し、事実上、スクランブル任務に就く戦闘機がありません。

 そして、陸軍にも戦車が無く、主力車両は兵員輸送用の装甲車になります。
 

 こうした低廉な国防費が、ニュージーランドの財政負荷を軽減していたと言えますが、今後、ニュージーランド近海にまで中国軍の空母などの艦艇が出没するようになれば、ニュージーランドの国防政策は転機を迎えることになるのではないでしょうか。
 

 特に、ニュージーランドは、日本さえ含まれていない「ファイブアイズ」の一角です。

 ファイブアイズとは、米国を中心とした諜報に関する協定を結んでいるとされる国々のことで、他に英豪加が含まれます。

 ですから、経済面は別としても、ニュージーランドだけが政治的・軍事的に中国に擦り寄るような政策はとれないはずです。

 そうなれば、日本も防衛協力を積極的に進めるべきと考えます。
 

 「自由・民主・信仰」といった大切な価値観を守るために、今後、ニュージーランドが安全保障政策をどうするのか注目したいと思います。

 ※:5月6日付産経新聞http://special.sankei.com/a/international/article/20190501/0001.html