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2019/05/02【最低賃金を国が一律に上げ過ぎると】

 5月1日はメーデーでした。

 連合は4月26日に中央大会を開催したのに対し、全労連などは新天皇陛下即位の日である5月1日に例年通り集会を開催したのは対照的な動きです。
 

 
 全労連などの集会では、一部の野党から最低賃金を即時に1000円とし、1500円を目指すとの声が上がっています。
 

 昨年度の最低賃金の全国平均が874円ですから、人手不足と相まって、ゆくゆくは1000円に限りなく近づいていくかもしれません。
 

 しかし、労働者の賃金は基本的には労働市場で決められるべきものであって、実態を無視して国が一律に最低賃金を決めるべきものではありません。

 もちろん、労働者にとって賃金は高ければ高いほど良いということは理解できますが、企業の賃金支払い能力を上回る最低賃金を設定すると、賃金の原資には限りがあるので、その企業の体力を超えた場合には、労働者の解雇が始まってしまいます。

 企業の体力は各社に違いがあるので、「一部の労働者の賃金は上がって、別の労働者は解雇される」という状況が生まれかねません。

 こうした事態は、それこそ格差の拡大に繋がるのではないでしょうか。
 

 また、企業の内部保留を賃金に回せば、すぐにでも最低賃金を引き上げられるとの主張もありますが、一般に企業は余剰があるから内部保留を蓄積している訳ではありません。

 バブル崩壊後の銀行による貸し剥がしの記憶が生々しく残る中で、消費増税による景気後退が懸念される状況では、企業は内部保留を安易に縮小するという経営判断ができません。

 ある経営者は、「日本の銀行は、いざという時にこそ、融資に尻込みする」と話していました。

 そうした時にこそ頼りになるのは内部保留ですが、その内部保留が十分でなければ、労働者にとって、最悪の場合、職場そのものがなくなってしまうこともあり得るのです。

 ですから、賃金を上げるためには、どうやって企業の業績を上げるかを考えることこそ必要と考えます。

 その上で、経営者は労働者に最大限の利益を還元する姿勢が大切ではないでしょうか。