防衛省が開発を完了した超音速空対艦ミサイル「XASM-3」の調達を見送った主な理由は、射程距離が短いためでした。
これは、中国軍などの艦艇に配備される対空ミサイルの射程距離が延び、XASM-3の射程距離を上回る可能性が出たため、攻撃時にXASM-3の発射母機を危険にさらすことになるからと見られます。
ただ、実際の戦闘においては、単純に彼我の兵器の射程距離だけが勝敗を左右する訳ではありません。
例えば、兵器の射程距離が長くても、その距離で目標を探知できなければ宝の持ち腐れになりますし、ミサイルを誘導するにあたってどの程度、電子的・光学的な妨害に強いかということも重要な要素です。
一方、相手の攻撃兵器の射程外から攻撃できることは、自軍の損失を減らすための決定的な要素となります。
では、なぜ、XASM-3の射程距離は十分ではなかったのでしょうか。
それには、もちろん技術的な制約もありますが、「他国に脅威を与えない」という政治的な理由から、既存の空対艦ミサイル「ASM-2」と同程度の射程距離とすることが開発当初より決まっていたとのことです。
それが事実であれば、結果的に政治が判断を誤ったということになります。
こうした過剰とも言える他国への配慮は今に始まったことではありませんが、日本が配慮することで、相手国が兵器開発の手を弛めることは無いと考えた方がいいのではないでしょうか。
政府は、今後、XASM-3の長射程化に取り組むとしていますが、空対艦ミサイルの防御手段は日進月歩です。
ある意味で、国防を危険にさらしているわけですから、日本防衛の切り札的存在の超音速対艦ミサイルは、優先的に装備化する必要があると考えます。