イーロン・マスク氏率いる電気自動車(EV)大手テスラの業績が前評判通りの軌道になかなか乗りません。
過日も、経営合理化のため従業員数の7%を削減すると発表しました。
マスク氏は高い先見性と他を圧倒する制御技術などにより、宇宙開発など新たな事業を次々に立ち上げ、経済界の次世代の星と目されています。
EV事業に関しても、他社のEVが一回の充電当たりの航続距離で200km程度だった時代に、400km以上のモデルを発売し、EVがガソリン車やディーゼル車に取って代わる時代が現実のものとなることを予感させて注目を集めました。
そして、3年前には販売の主力になるであろう比較的安価なEVを発表し、約500kmの航続距離と高度な自動運転技術と相まって、日本でも多くの販売予約が入ったとされます。
しかし、この主力車種の生産の遅れが響いて、日本の顧客には未だに納車が始まっていないなど、度々事業計画の見直しを迫られています。
肝心のEVの性能も、日本のメーカーが400kmを超えるモデルを発表するなど、3年の間に圧倒的な優位性が失われつつあるように見えます。
時代の寵児と見られるマスク氏であっても、経営に関しては一筋縄ではいかないということでしょうか。
折しもマスク氏は中国に大規模なEV工場を建設することを発表し中国政府から熱烈な歓迎を受けています。
米中貿易戦争の最中で中国を利する動きにも見えなくはありません。
マスク氏は、火星移住など高い先見性を評価されていますが、「中国を民主化にどう導くか」という視点に立って、事業を展開することにも期待したいと思います。