台湾は福島第一原発の事故を受けて、脱原発に舵を切りましたが、先に行われた国民投票で原発を運転できる期限を撤廃することが決まりました。
具体的には、2025年までに原発を停止させるという法律が失効し、2025年以降も運転を続けることが可能となりました。
台湾海峡の軍事バランスが大陸側に傾きつつある中で、島国である台湾が有事の際に中国によって海上封鎖されるような事態となれば、台湾にとって原発は死活的に重要なエネルギー源となります。
ですから、安全保障の観点から、台湾も日本同様、脱原発を進められる状況にはありません。
今回の国民投票の結果を受けて、脱原発の基本方針が見直されるわけではありませんが、まずは危機を回避する動きではあると考えます。
これを中国共産党政府から見れば、台湾を締め上げるためのカードが一つ減ったことを意味します。
福島第一原発の事故を受けての原発に対する台湾国民の危惧は理解できない訳ではありませんが、多分に感情的な要素もあるようです。
実際、同じ国民投票で、福島県を含む近隣の5県産の農産物の輸入は引き続き禁止することに決まりましたが、その5県産の農産物の危険性に科学的な根拠はありません。
また、選挙におけるインターネットを使った外国の干渉は世界中で問題となっていますが、そうした選挙干渉の急先鋒の1つが中国です。
中でも、台湾は中国による選挙干渉の被害が最も深刻だと言われています。
中国としては、台湾に親中政権の樹立を促すとともに、脱原発を進めさせ、更には日本との関係を悪化させるという思惑があるということは容易に想像できます。
今回、そうした思惑の一部は果たせなかったわけですが、台湾の地方選で親中の野党躍進した原因の1つとして中国の影響は排除できません。
ですから、中国による選挙干渉の動きには引き続き注意を払う必要がありますし、これは台湾に限ったことではなく、日本もその危険性を認識し対策を講じていかなければならないと考えます。