トランプ大統領は、米国の貿易赤字削減に向けて、日本に対しても攻勢を強めています。
日本にとっては、輸出の主力である輸入車に高い関税を掛かられるのは、何としても避けたいところですが、外国メーカーにシェアを奪われている米国の自動車メーカーにとっては、国内での製造能力があるうちに、何とか体制を立て直したいというのが本音ではないでしょうか。
米国では今年春に象徴的な出来事がありました。
米国三大自動車メーカーの1つフォードが、それまでの主力車種であった中型セダンの次期モデルの開発を行わないと発表したのです。
市場の嗜好が、セダンからSUVなどに移っているとはいえ、一定の市場規模がある中型セダンの開発を断念したのには、このままでは日本をはじめとした外国メーカーに勝てないとの判断があったようです。
そうした中、米国メーカーにとって最後の牙城と言えるのが、日本ではなじみの無いピックアップトラックといわれる車種です。
この車種は、米国以外ではあまり需要が無いため米国メーカーが圧倒的に強いのですが、近年、日本や欧州メーカーなどからの参入が相次いでいます。
新規の参入は、米国圏での生産が主ですが、かつての自動車の代名詞的な存在であった中型セダンを断念し、今度は米国自動車産業の象徴とも言えるピックアップトラックの市場が奪われるということであれば、米国のプライドが傷つくことは想像に難くありません。
トランプ大統領が、貿易赤字の削減に向けて語気を強めるのには、国内の保守層を中心にこうした事情があるということも知っておく必要があります。
ただ、穿った見方をすれば、トランプ大統領が進める関税政策の最大の目的は中国の貿易黒字を削減することであり、その為には他の貿易相手国にも中国と同様に厳しく対応しているということも考えられます。
ですから、本丸は中国の貿易黒字の削減であるということを念頭に、日本も対応する必要があるのではないでしょうか。