地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入費用が、当初見積もりの3倍になるとの見通しを政府が発表し波紋を生んでいます。
イージス・アショアとは、高性能レーダーと迎撃ミサイルなどから構成された艦載のイージスシステムを、地上配備できるように転用したものです。
日本では、北朝鮮などの弾道ミサイルを想定し、イージス艦の「SM3」と地上配備の「PAC3」の2段構えの迎撃態勢でしたが、イージス艦の稼働負担の軽減と、PAC3の射程の短さを補うために、イージス・アショアの導入が決まりました。
SM3の射程の長さを勘案し、国内では2カ所の配備で全国をカバーできるとされ、1カ所当たり1千億円を見込んでいましたが、実際は、レーダーの高性能化の費用などでその3倍の費用が見込まれています。
レーダーの高性能化などの費用があるにせよイージス艦の建造費が1千5百億円から1千7百億円程度ですから、イージス・アショアのほうが高いことになってしまいます。
維持費など単純に比較はできないものの6千億円もの予算があれば、イージス艦を3~4隻追加したほうが、迎撃能力や運用の柔軟性が増すとの考え方もできます。
当初見積もりに比べて、実際の導入費用が高くなることは往々にしてありますが、それにしても3割増ではなく3倍増というのは、当初見積もりが不備であったというそしりを免れません。
北朝鮮の非核化の動きがあるものの、中国の核戦力を踏まえれば、弾道ミサイル迎撃システムを整備することは正しい方向と言えます。
だからこそ、政府には十分な説明が求められますし、国防にとって何が最も効果的かという観点で、もう一度検討するべきかもしれません。