トランプ大統領がEU製の鉄鋼製品に課した関税に対抗して、EUは米国製の農産品やバイクなどに関税を課すことを決めました。
これに対し、米国のバイクメーカーであるハーレーダビットソン社は、EU向けの製品の製造を米国外に移すことを明らかにしています。
米国の産業を守るために課した関税が、逆に製造業の国外移転を招いたとしてトランプ大統領が批判されています。
しかし、EUの鉄鋼製品の輸入額に対するハーレー社のバイクの輸出額は、比べるべくもない小さな額です。
トランプ大統領のEUに対する通商政策の是非は別として、例えハーレー社の工場の一部が米国外に移ったとしても、米国の鉄鋼産業を守ることができれば、米国にとっては大きな利益となるので、このメリットとデメリットだけを比べれば、トランプ大統領がそこまで批判される筋合いはないのかもしれません。
一方、米国製のバイクへのEUの課税は、事実上、米国製品の象徴であるハーレー社のみを対象としており、トランプ大統領を支える米国保守層への打撃を狙った象徴的意味合いの強いものですから、ある意味で嫌がらせに近い感覚があります。
EUとしては、米国の関税に対し同規模の報復関税を課せば、世界経済に悪影響が及ぶとの考えがあって、トランプ政権への牽制として象徴的な関税を課しているだけなのかもしれませんが、そうであるならばEUには対米国だけでなく、対中国への貿易を見直して欲しいものです。
特に、EUの製品には中国で軍事関連に転用できるものが数多くあります。
例えば、中国海軍の駆逐艦など最新の艦艇に搭載されているディーゼルエンジンはドイツの技術ですし、中国の主力中型ヘリコプターはフランスの技術が使われています。
また、中国海軍の艦艇に搭載されている電子機器は、イタリアやオランダの企業の技術支援があると取り沙汰されています。
過日も、フランスが艦艇用のヘリコプター拘束装置を中国に売却することを決めて、日本政府が懸念を示したこともありました。
中国市場の大きさは、海外の企業にとって魅力的だとは思いますが、民間用と軍用との境界が曖昧であるからこそ、各国は中国への輸出にもっと慎重かつ厳格であっては欲しいと考えます。
特にEUの場合、地理的に遠いこともありロシアの脅威に比して中国の脅威を現実味を持って感じられないのかもしれませんが、是非、再考すべきではないかと考えます。