民主化を求める学生らが政府に虐殺されたとされる天安門事件から29年となります。
共産党の一党独裁である中国政府は、天安門事件の報道に神経を尖らせており、中国国内では事件に関するネット上の検索が厳しく制限されるなど、事実上、事件が無かったことにしようとしています。
その中国政府が、対外的に発表している天安門事件の死者数は319人となっています。
この事件で、中国軍に掃討される人々の様子が世界中に拡散しているだけに、さすがに対外的に事件が無かったとすることはできずに発表した数字ということになります。
しかし、事件を無かったことにしたい中国政府が発表している数字だけに、犠牲者数が矮小化されていることに疑いの余地はありません。
こうした中国政府の姿勢を追認するかのように、NHKは数年前まで、天安門事件で虐殺は無かったとする内容を報道番組で放送していました。
19時のニュースの直後に放送される番組だったために、NHKの報道局としての基本的な見解と判断できます。
NHK内に中国共産党の主張にシンパシーを感じる人がいるのかどうかは別として、中国政府の主張に沿って報道したほうが中国国内での取材活動が円滑になり、結果的に視聴者の利益になるとの判断があったのかもしれません。
しかし、報道の自由を否定する中国政府を擁護するかのような姿勢は、報道機関としての自らの存在意義を否定することにも繋がりかねません。
こうしたNHKの姿勢が変わったように思われるのが、2014年に就任した前NHK会長の代からではないでしょうか。
今では、NHKが天安門事件を報道する際、中国政府の発表した犠牲者数と共に、実際は更に多いとの指摘があると伝えるようになりました。
こうした報道は以前に比べれば評価できるものですが、今後もNHKは中国政府に臆することなくもっと中国の民主化を促す報道をすべきではないでしょうか。