青森県の在日米軍三沢基地を離陸したF-16戦闘機が、エンジンの不具合に見舞われ、機体を軽くするために外部燃料タンクを湖に投棄するという事件がありました。
当時、湖では数艘(そう)の漁船が操業しており、一部のマスコミなどからは、「米軍による安全を顧みない行為であり、全国どこでも起こり得る」などとして批判が上がっています。
しかし、毎時数百キロメートルの速度で飛行する戦闘機から、湖に浮かぶ小さな漁船の存在を実際に確認できたか否かは別として、当該米軍機が陸上ではなく湖に外部燃料タンクを投棄したという点で、被害を最小限に留めたいという意図は感じられます。
そしてこの問題は、「何があっても地上に物を落下させてはまかりならない」ということならば、「戦闘機は単発か双発か」という議論に行き着くことにもなります。
F-16はエンジンが一つである単発の戦闘機です。
ですから、エンジンに不具合が起きれば、たちまち高度を失います。
しかし、技術の発達でエンジンの不具合が発生する確率は非常に低く、単発の機体であっても信頼性が高いとして各国で導入されています。
かつて日本でも、F-16をベースとしたF-2戦闘機を導入するにあたって、F-4やF-15といった双発の機体を数多く運用してきた経緯から、単発のF-2を危惧する声がありました。
しかし、エンジン技術の発達に加えて、「エンジンが二つあれば単純に故障発生率も2倍になる」とか、「被弾した際の生存性は、単発も双発もさほど変わらない」などとして、経済性も加味して、結局F-2の導入が決定したと言われています。
現在、自衛隊でも導入が進むステルス戦闘機F-35も単発の機体です。
信頼性が高い上に、兵装などの多くを機内に搭載するF-35は在来機と単純に比較できませんが、それでも今回の件で心情的には「やっぱり双発のF-22のほうが良かった」と思う関係者も多いかもしれません。
今後、F-2の後継に加えて、F-15の後継の検討が本格化します。
F-35の追加導入が濃厚と言われていますが、国産の双発機の開発を期待する声も高まるかもしれません。
いずれにせよ日本の航空産業の技術力の維持向上のためにも、是非、世界水準を上回る国産機の導入を実現して頂きたいと考えます。