中国地方を管轄する広島高裁が、九州の阿蘇山の噴火を理由に、愛媛県にある伊方原発の運転を停止する仮処分を決定しました。
阿蘇山から130km以上離れている伊方原発、瀬戸内海を挟んだ対岸の中国地方の住民、各々がどう影響し合うのかは不明なままで、少し疑問も感じる人も多いのではないでしょうか。
確かに、広島高裁が言うように、一般的には、原発事故が及ばす地域住民への影響は大きいものです。
一方で、福島第一原発の事故でさえ、漏れ出した放射能が直接影響して亡くなった人はいないというのが真相です。
もしも広島高裁が、阿蘇山が壊滅的なカルデラ噴火を起こすことを想定している場合、その被害は東日本大震災全体の比ではありません。
ならば、噴火が原発に及ぼす影響と同時に、広島高裁は九州をはじめとした日本全体の国民生活に及ぼすあらゆる影響を考える必要があるということになります。
近年の地震や災害に関する研究では、数万年から十万年に一度の大規模噴火を想定した地域や日本全体の避難計画や災害対応を考える必要はないという議論もある中で、伊方原発だけがなぜ噴火を想定した対応をしなければならないのでしょうか。
ですから今回の広島高裁の決定はどう考えてもナンセンスです。
今後、四国電力側の申し立てが認められれば、仮処分は覆ることもありますが、来年1月に予定されていた再稼動は事実上不可能となりました。
こうした事例が慣例化すれば、災害以上にエネルギー不足によって国民生活に及ぼす経済的ダメージは計り知れないと考えます。