今国会では、来年に予定されている消費税の増税分の使途など、教育の無償化に向けての議論が活発化するものと思われます。
海外では、大学を含む教育費が無料の国も在り、そうした国を羨ましく思う人も少なくないかもしれません。
確かに、教育は国の礎であるため、国民が豊かさを享受できるように、教育の無償をすることは、一見殊勝な政策にも見えなくもありません。
そして、経済的な理由により、教育を受けたくても受けられないご家庭が数多くあることは、様々に報じられています。
しかし、経済的に余裕の無い家庭に対する教育費の支援制度が、既に在ることは、あまり報道されていません。
ですから、本来教育費を払える家庭を含めて、一律に教育費を無償化にすることが、赤字が拡大し財政が逼迫している日本にとって、喫緊の課題であるとは言えません。
むしろ、教育の質の向上よりも、格差解消の名目で無償化を優先させたら、どんなことが起きるのでしょうか?
まず、経済的に支払い能力があるご家庭は、より質の高い教育を求めて、学校に加えて塾や予備校で学力を補うでしょう。
その結果、この様な手厚い社会保障制度が、益々格差を生むことになります。
さらに、この社会保障制度を支える為に、更に税金が高くなります。
加えて、このように税率が高まる中で、政権与党が選挙対策として社会保障を厚くする公約を訴え、選挙に勝ち公約を実行する。
このスパイラルの結果が、竹下内閣において100兆の負債を返すために3%の消費税導入をしたのに反して、現在は1000兆円超の負債を抱える結果となっています。
こうなるならば、もともと塾に行かなくても必要な学力を身につけられる学校をつくるなど、“努力する”のが理想ではないでしょうか。
どのようなものであったとしても政府が無償にしてくれるのであれば、“ありがたい”と感じる方もおられるかもしれません。
しかし、無償化の財源が消費増税であれば、様々な消費の場面で家計に重くのしかかりますし、それは景気悪化という形で家庭の所得にも影響を与えます。
しかも、その負担は子育てが終わった後も続くのです。
教育の無償化に異論を唱えることは“タブー視”されがちですが、教育現場での様々な問題を踏まえれば、教育に関して率先してやらなければならないのは、教育の無償化ではなく、≪教育の質の向上≫であると考えます。