災害発生時に物資輸送の主力を担う自衛隊のヘリコプターに、「チヌーク」の愛称で知られる「CH-47」という機体があります。
一般的なヘリコプターとは異なり、タンデムローターと言われる回転翼が前後に二つ付いた独特の形のあの大型の機体です。
そのCH-47が、先月の熊本地震の発生時に、点検のため約8割の期待が飛行できない状態だったことが分かりました(※)。
航空機の場合、ある個体で異常が発生した場合、安全を確保するために、その型の機体全てを飛行停止にして緊急に点検することがあります。
こうした事態の際に、影響を最小限に留めるために、複数の型の機体を配備することが重要となります。
しかし、コストや整備性などの観点から、実際は、複数の型の機体を配備することは困難な場合があります。
今回も、自衛隊では、CH-47の不足分を補うために、中型のUH-1やUH-60などを活用することになったはずで、十分な輸送能力を確保できるか心配があったはずです。
そこで、今回の熊本地震の支援では、日本の要請で米軍のオスプレイが物資の輸送に加わりました。
当初、オスプレイの日本配備の懸念に対する政治的な思惑により、必要のないオスプレイを投入したとも言われましたが、不足した輸送力を補うために必要な判断だったと言えそうです。
阪神淡路大震災の際は、左翼的な首相や首長により、自衛隊の投入が遅れたと指摘されていますが、災害時の初動は一刻を争うので、やはり政治的な思惑を挟むべきではありません。
各種世論調査によると、熊本地震の対応が評価されて、安倍政権の支持率は少し回復したようですが、現在の安倍首相は、7月の選挙に有利か不利かだけで政権を運営しているように見えます。
長期的な視野に立ったビジョンを国民に示せなければ、選挙制に基づく民主主義の弊害が現れるのではないでしょうか。
※:5月16日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/national/20160515-OYT1T50135.html