三菱自動車が製造する軽自動車のうち、他社にOEMで供給している分を含め4車種で、カタログなどに記載する燃費を偽っていたことが明らかになり社会問題化しています。
近年では、燃費など維持費が比較的安い軽自動車の人気が高く、メーカー各社が熾烈な販売競争を繰り広げています。
競争によりメーカー間でお互いに切磋琢磨することは、消費者にとっても利益となりますが、不正をしてまで販売を伸ばそうとすれば、結局は因果の理法により自社の首を絞めることになります。
日本の製造業の信頼をも貶めた三菱自動車の責任は大きいと言わざるを得ません。
ただ、今回の問題は三菱自動車だけが問題なのでしょうか。
車種別の正式な燃費は国交省で計測しますが、その作業は屋内の試験台で行うため、実際に走行した場合の燃費とは異なります。
そこで、実際に走行した場合に近づけるために、メーカーが実走して計測した「走行抵抗」と呼ばれる補正値を利用して燃費を求めます。今回の事件では、この走行抵抗を偽装したとされます。
三菱自動車の社長によれば、今回の偽装では燃費に5~10%のかい離があると見られるとのことです。
つまり、走行抵抗の値だけで5~10%燃費を改ざんしたことになります。
しかし、走行抵抗は、車体の空気抵抗とタイヤの転がり抵抗が支配的なのですが、軽自動車は車体の寸法が規格で制限されているため必要な機能を盛り込めばメーカー各社で空気抵抗に大差が出るとは考えにくいですし、タイヤも自動車メーカーの意向でチューニングの違いはあるものの基本的にはタイヤメーカーの製品ラインナップからのチョイスとなるため大きな差が出ることは考えにくい状況です。
にもかかわらず、三菱自動車が提出した走行抵抗は、他社に比べて飛び抜けて良好な値だった可能性があります。
であるならば、今回はOEM先である日産自動車の指摘で問題が明るみになりましたが、国交省側も三菱自動車側が提出した走行抵抗の値に疑問を持つべきだったのではないでしょうか。
そもそも、自動車メーカーが提出した値に依存する国交省の燃費試験の方法自体に問題があるのではないでしょうか。
ここでも大きな許認可権限を持つ行政の制度疲労が現れていると言わざるを得ません。
日本が、発展するために必要なのは、「大きな政府」ではなく、「小さな政府」です。
大きな政府のもとでは国民の自由が縛られ、創意工夫による発展が阻害されてしまいます。