オーストラリア政府は大規模な潜水艦の調達を計画しており、日本にとって武器輸出三原則緩和後、初の大型の輸出案件として有力視されていました。
しかし、ここに来てオーストラリア政府が潜水艦の共同開発相手として日本を除外し、独仏に絞り込んだと見られるとした報道がありました(※)。
この報道が事実なら、オーストラリアが中国に阿った可能性があり、中国の外交のしたたかさの一端を示すものとなります。
もともと、今回の潜水艦調達計画は、オーストラリアの安全保障の要とも言えるもので、隣接する東南アジア諸国の軍備増強もにらみつつ、主眼は海洋進出を拡大する中国海軍に対応するためと見られていました。
性能や運用実績から考えれば、日独仏の中では、日本の「そうりゅう型」をベースとした潜水艦が最も適切であることは周知なのですが、中国は、オーストラリアが日本製の潜水艦を採用することを牽制する発言を繰り返してきました。
オーストラリアの最大の貿易相手国は中国であり、思うように経済が向上しない現在のオーストラリアにとって、経済面で中国は大切な存在です。
実際、先週、オーストラリアの経済訪中団が千人規模で北京を訪問しています。
特に、昨年、就任したオーストラリアのターンブル首相は親中派とされ、同首相の義理の娘の父親が中国共産党関係者との指摘もあるほどです。
オーストラリアの潜水艦調達計画での日本の脱落は正式に発表されたわけではありませんが、オーストラリアの同盟国である米国も日本製を支持していただけに、民主主義や自由の価値観を共有している日米豪の同盟関係に、中国が風穴を空けることに危惧を覚えます。
※:4月20日付産経新聞http://www.sankei.com/world/news/160420/wor1604200013-n1.html