中国の習近平主席は、訪中した米国のケリー国務長官と会談し、「太平洋には中米二つの大国を受け入れる十分な空間がある」と改めて主張しました(※1)。
これは、「太平洋は広く、米国は既にハワイやグアムなどを領有しているのだから、中国が東シナ海や南シナ海で領域を拡大してもとやかく言うな」という意味にとれます。
こうした中国の姿勢を現在の国際常識に照らし合わせれば、たいへん不遜な態度と言えます。
現在、中国は南シナ海でフィリピンなどと領有権を争っている岩礁を埋め立てる工事を行っています。
その埋め立て面積は、東京ドーム約170個分に相当するとの見方もあるほど大規模で(※2)、軍用機が利用可能な滑走路などを建設していることは確実です。
中国は日本の尖閣諸島を日本政府が国有化したことに猛反発しましたが、こうした中国の物理的に現状を変更する動きに対し、今回訪中したケリー長官は遠回しに懸念を示しただけで、国際社会は中国に対し何ら圧力をかけることができていません。
自国の目と鼻の先に滑走路を建設され、のど元にナイフを突きつけられたとも言えるフィリピンですが、これが覇権を拡大する中国の姿です。
フィリピンでは、1990年代に在比米軍が撤退しましたが、その後、経済的な事情もあって自主防衛力を整備することを怠り、空軍に至っては領空侵犯に対応する戦闘機すら維持できませんでした。
中国のやり方を見れば、「米軍が撤退し、自主防衛力を持たなくても平和が維持できる」という考えは幻想にすぎないことが分かります。
中国は、力の空白をついて勢力を拡大するのです。
こうした事実を踏まえれば、普天間基地の移設が沖縄や日本の安全保障にとって如何に重要かが分かります。
※1:5月17日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/world/20150516-OYT1T50116.html?from=yartcl_popin
※2:5月9日付産経新聞http://www.sankei.com/world/news/150509/wor1505090021-n1.html