福井県の大飯原発の再稼動をめぐる裁判で、福井地裁は原告の訴えを認め、再稼働を認めない判決を下しました。
訴えられていた関西電力は、判決後、控訴することを決定しました。
この裁判の判決には、いくつかの疑問点があります。
まず、今回の判決は3年前の福島第一原発の事故を例にあげて原発の安全性を論じていますが、福島第一原発と大飯原発の技術的な違いに踏み込んで判決を下していない点です。
専門家の話では、福島の事故は外部電源が全て断たれたことが問題となっていますが、大飯原発は福島第一原発とは仕組みが異なり外部から冷却することが容易であるにもかかわらず、福島第一原発と大飯原発を同一視したような今回の判決は原子力の素人が下した無見識なものとの見方があります(※)。
また、今回の判決では、「福島の原発事故では15万人もの住民が避難生活を余儀なくされ、原発には極めて高度な安全性や信頼性が求められている」としていますが、そもそも避難指示事態が妥当であったかということが疑問です。
結果的に、放射能により健康被害を直接被った人はいませんが、医療機関などから無理に避難したことにより体調を崩して亡くなった方は大勢います。
更に、「福島第一原発の事故では、一時250キロ圏内の住民の避難が検討されたことがある」ことをあげて、大飯原発から250キロ圏内の住民について訴えを認めていますが、こうした根拠が曖昧な緊急時の数値を判決の根拠にすることも論理的に説得力がありません。
この他にも今回の判決には納得のいかない点がありますが、いずれにせよ科学的な根拠が曖昧な今回の判決が確定すれば、どんなに技術的に安全性を高めても、原発を運転することができなくなる恐れがあります。
安全保障上、日本に原発は必要ですし、今後も世界は原発を必要としています。
日本には、福島の事故を教訓として原発の安全性を高める責任がると考えます。
控訴審で今回の判決が覆ることを願います。
※:5月21日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140521/waf14052120330043-n1.htm