世界では、いわゆる富裕層をターゲットとした増税が広がりつつあるように見えます。
1月に行われた米国のオバマ大統領の2期目の就任演説では、「富裕層に増税し、貧しい人たちに配分することで平等な社会を実現する」という決意表明が読み取れました。また、フランスでも、富裕層に対する所得税率を75%に引き上げる動きがあります。更には、経済発展途上のインドでも富裕層への増税が議論されているそうです。
そして、御存じのように日本でも、2015年から年間所得4千万円以上に対し所得税が40%から45%へと増税されます。
しかし、こうした富裕層をターゲットとした増税は、中長期的な税収全体では、むしろ税収が減る可能性があるのです。
実際、日本だけでなく海外でも、増税により富裕層がより税率の低い国外へ脱出する動きが報じられています。
財政政権を増税に頼る動きは、安易ではないでしょうか。
今回の日本の所得税の増税分と、相続税の増税による税収の増加は約3千億円と見積もられていますが、この数字は全所得税収入13.5兆円(2011年)の2%にすぎません。
一方で、海外では、富裕層への税率を下げて税収が増えたケースもあります。
ロシアでは、2001年に、個人所得税を一律13%にするフラットタックス制を導入した後、同税の収入が実質25%も増えたとのことです。
また、シンガポールや香港は、毎年のように税率を下げていますが、税収はむしろ増え続けているということです。
富裕層への増税は、富裕層以外からの支持を得やすいのですが、そこに富裕層への嫉妬心がないか点検が必要です。
いわゆる「お金持ち」を貧乏になる方向に誘導しても、その結果、国民全体では決して豊かになることはありません。
富裕層への増税を福祉の充実と絡めて論じる動きもありますが、むしろ減税により経済を拡大していくほうが福祉の向上に繋がると考えます。
富裕層を増やしていくことが、国民全体ではその恩恵に与れるのであり、現在の日本には、金持ちを祝福することも必要なのではないでしょうか。
安倍政権によるいわゆるアベノミクスには総じて賛成ですが、消費税増税と合わせて、富裕層への増税は是非見直すべきです。
そして、現在の日本の複雑な税制を簡素化することで、無駄な労力を省いていくことも必要と考えます。