12月21日、米議会で、米国による沖縄県の尖閣諸島の防衛義務を明記した2013会計年度国防権限法案が可決されました(※1)。
これは、尖閣諸島が日本の施政権下にあることを、米国が明確に認めたものであり、尖閣諸島の防衛上、日本にとって意義が大きいものです。
一方で、同法案では、一旦は凍結していた在沖縄海兵隊のグアム移転関連費が復活しています。
これは、オバマ政権の東アジア重視の戦略の中で、中国軍の活動を牽制するためと言われていますが、日本にとっては、在沖縄米軍兵力が減ることを意味するので、手放しで喜ぶことはできません。
穿った見方をすれば、海兵隊の移転は、増強を続ける中国軍のファーストストライクから、米軍の被害を最小限に抑えるためとも取れます。
これが、中国軍を誘い込む米軍の戦略の一環であればいいのですが、中長期的に米軍が東アジアから引いていくことを意味するのであれば、日本は早急に防衛体制を見直す必要があります。
防衛省が発表している「平成25年度概算要求の概要」(※2)では、こうした東アジア情勢に鑑みても、いわゆる正面装備の新規取得は最小限に抑えられています。
例えば、護衛艦や潜水艦は各1隻、次期戦闘機は2機、輸送・多用途・戦闘ヘリが各1機といった具合です。
対して、この概要で目に付くのが、「艦(機)齢延伸」「能力向上」といった文言です。
要するに、防衛予算が限られているので、10年20年前に調達した装備を改修して何とか使い続けるといったことでしょうか。
現在、自衛隊は、中国軍に対しては装備の数では劣るものの、性能面で凌駕しているため優位にあるとされていますが、このままではその優位性も損なわれ、抑止力が一段と低下してしまう恐れがあります。
日本は、10年20年先を見据えた国家防衛のビジョンを、早急に示すべきではないでしょうか。
※1:12月22日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/world/news/121222/amr12122210190007-n1.htm
※2:我が国の防衛と予算-平成25年度概算要求の概要http://www.mod.go.jp/j/yosan/2013/gaisan.pdf