中国は、同国で初となる固定翼機を運用できる空母「遼寧」を9月末に就役させました。
現状では、「遼寧」が直ちに日本の現実的な脅威となるような能力を持ち合わせていないようですが、今後、自衛隊は、対空母、あるいは対空母機動部隊の戦術を考慮しなければならなくなりました。
日本は、太平洋戦争中、米国に次ぐ規模の空母機動部隊を有していましたが、現在は、憲法9条や専守防衛の考え方から外れる恐れがあるため、国内で空母を持つためのコンセンサスが得られていません。
しかし、自衛隊は、複数のヘリコプターを搭載可能な、空母にも似た大型の護衛艦「ひゅうが型」を2隻保有しています。
過日、私は、神戸港に寄港した、この「ひゅうが」の内覧会に参加し、実際に艦内を見学して参りました。
従来から自衛隊は、3機程度のヘリコプターを搭載可能な護衛艦「はるな型」など4隻を運用していました。
「はるな」は一般的な形状の護衛艦の後ろ半分を飛行甲板としたような艦で、実際の運用では様々な制約がありました。
そこで、この「はるな型」などの更改に伴い、いわゆる全通式甲板を持った「ひゅうが型」が建造されました。
自衛隊では、「ひゅうが」をあくまでも、自艦でも対潜攻撃などが可能な「ヘリコプター搭載護衛艦」と呼んでいますが、国際的に見れば「軽空母」とも呼べるものです。
ただし、政府は公式には、「ひゅうが」の戦闘機などの固定翼機を運用する能力について何ら認めていません。
確かに、「ひゅうが」には、固定翼機を発艦させるカタパルトがありませんし、ハリアーやF-35Bといった短距離離陸垂直着陸型の航空機を運用するためには種々の改装が必要なようです。
しかも、そもそも自衛隊は前述のような艦上戦闘機を保有していません。
しかし、自衛隊がこの種の艦を保有しているということは、中国にとって潜在的な抑止力となっていると思われます。
今後、海上自衛隊には、よりヘリコプターの運用能力に特化した大型の護衛艦が就役する予定です。
また、航空自衛隊の次期戦闘機としてF-35A(通常の離発着型)を選択したことも、将来のF-35Bの導入にプラスに働くかもしれません。
近いうちに中国は「遼寧」に続いて、複数の空母を建造し就役させると言われています。
覇権を露わにする中国の軍事力が拡大する一方で、中長期的に米国がアジアから後退していくことが読み取れるのであれば、日本も、憲法改正の議論と合わせて、正規型の空母の保有を議論する必要があるのではないでしょうか。