前回もこのブログで触れた平成24年版防衛白書についてですが、中国外務省は、7月31日、強い不満を表明しました。
白書では、中国の軍備拡大に懸念を示していますが、同省の報道官談話で「中国の軍備増強は国家の主権と領土の保全を守るためのものであり、他国の脅威にならない」と反論したとのことです(※1)。
しかし、中国の軍備増強や活動範囲の拡大は、誰の目から見ても“防衛”の域を超えています。
実際、同じ31日の中国国防省の報道官記者会見では、尖閣諸島に関して国家主権と海洋権益を守るために「軍としての職責を果たしていく」と述べ(※2)、武力行使を示唆しています。
今回の白書では、中国共産党幹部の腐敗問題や政軍関係の複雑化など、中国の内政上の問題にまで踏み込んでいます。
確かに、権力移行期にある中国では、国内の権力闘争が激化していると推測されます。
中国では、形の上では、軍の上に共産党がありますが、実際は、軍は強大な権力を持っており、党が軍を完全に掌握している訳ではないようです。
中国の世論調査では尖閣問題で「武力行使」を支持する人が9割を占めるとの報道がありましたが、中国人民解放軍も反日教育を受けてきた将校や兵士が多数を占めています。
次期指導部としては、軟弱な姿勢を見せられない状況であり、日本は、中国の権力闘争の中で「共通の敵」として標的にされる懸念もあります。
従って、今回の防衛白書も、さらに踏み込んで「中国は危険な軍事国家である」と指摘した上で、「国防の気概」を鮮明にする内容にすべきであったのではないでしょうか。
※1:7月31日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/world/news/120731/chn12073117240007-n1.htm
※2:同http://sankei.jp.msn.com/world/news/120731/chn12073120570009-n1.htm