7月31日、政府は平成24年版防衛白書を閣議で了承しました(※)。
白書では、中国海軍艦艇の太平洋進出が常態化しつつあるとし、中国公船による尖閣諸島周辺での日本領海侵入も明示しています。
尖閣諸島周辺を含む東シナ海では、中国の水上艦艇の行動が活発化していますが、当然、海面下では中国の潜水艦の行動も活発化しているものと思われます。
政府もこうした状況などに鑑み、潜水艦の保有数を増加させる方針ですし、海上自衛隊の潜水艦も東シナ海周辺での行動を強化していると思われます。
自衛隊の潜水艦の能力は、世界的にも高いと評されていますが、基本的には全て通常動力の艦です。
対する、中国は原子力潜水艦も多数保有しており、今後もその数と能力を向上させていくものと思われます。
原子力潜水艦は、通常動力潜水艦に比して、速力や連続潜航時間などが大きく上回ります。
2009年に就役した海上自衛隊最新の「そうりゅう」型潜水艦では、AIPと呼ばれる非大気依存推進システムを搭載しており、従来では主に蓄電池に依存していた通常動力潜水艦の水中での性能を画期的に改善しました。
しかし、AIPはシステムの大きさに比して得られる出力が大きくなく、原子力にはまだまだ及びません。
現状では、自衛隊の潜水艦は、中国の原子力潜水艦と対峙している場面が多数生じている可能性があり、今後も自衛隊の優位性がいつまで確保できるか懸念されます。
福島第一原発事故の影響もあり、日本国内にはまだまだ原子力アレルギーがある状況ですが、拡大を続ける中国軍の脅威に対する効果的な抑止力として、自衛隊が原子力潜水艦を保有することも考えるべき時がきているのではないでしょか。
※:7月31日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120731/plc12073110000007-n1.htm