5月29日の各紙の報道で、スパイ活動の疑いのある中国大使館に勤務していた外交官が、警視庁の出頭要請に応じず、帰国していたことがわかりました。
この人物は、中国人民解放軍の諜報機関出身で、日本語や日本文化などに熟達していたとのことです。
中国は世界最大の諜報工作部門を持つ国であり、各国でスパイ活動を行っており、日本でも少なくとも3万人の工作員が活動中との説もあります。
2007年の海上自衛隊の幹部によるイージス艦の情報漏えい事件でも中国の影が取りざたされましたし、米国では2009年に中国によるものと思われるサイバー攻撃により、国防総省から最新鋭のステルス戦闘機の技術情報の一部が盗み出された例などがあります(※)。
中国のスパイ活動は、軍事技術の取得以外にも、海外の政治家などに買収を行って他国の政治家が中国政府への批判を控えるように仕向ける工作を行っているとの指摘があります。
こうした活動は、今回のように中国人民解放軍の諜報機関の出身者が行うほかに、ビジネスマンなど広い範囲の人物が関わっている可能性があり、その活動の全容をつかむことは難しいのが現状です。
特に日本では、昨年の7月から中国人旅行者に対する「沖縄数次ビザ」が導入されており、一度「数次ビザ」を取得すれば3年間はフリーパスで来日することができるため、本来必要な犯罪者の入国や不法滞在を防止するための身元調査が十分に行えず、工作員にとっては都合のいい制度になっています。
既に、沖縄での反基地活動や、反原発運動にさえも諜報工作が暗躍しているとの指摘もあり、中国の諜報活動が日本の世論や政府をいつの間にか転覆してしまうことがないように、危機意識を持っておく必要があるのではないでしょうか。
※:2011年12月12日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/world/news/111212/amr11121221110007-n2.htm