国家が繁栄し、国民の生活をよりよく改善するために、国家の税収が増えることは善であると考えます。
しかし、消費税増税はそのための手段です。
ましてや、手段を間違えた場合には取り返しのつかない事態を引き起こします。
現在のようなデフレ下での消費税増税は、たとえるならば貧血患者に献血を強制するようなものです。
さらに、日本政府はこの手段のタイミングを過去2度、100%の確立で過ちました。
具体的には、消費税が始まった後、また消費税が増税した後、政府の思惑とは反対に、税収は減り、経済は衰退しました。
日本経済および、国民生活は失血症ともいえる事態に見舞われたのです。
今、3度目の愚が現実化しようとしています。
4月7日、野田首相は、社会保障・税一体改革に関する政府主催の対話集会に出席し、若者中心の現役世代の参加者に消費税増税への理解を訴えました。
その中で野田首相は、「今日よりも明日が良くなるという展望を持つためには一番の不安を取り除くことが前提。一番の不安は、社会保障の持続可能性だ」などと述べました。つまり、野田首相は、「社会保障・税一体改革は、若者の将来の安心に繋がる」という政府の持論を強調したかったようです。
しかし、消費税増税によって、年金などの現行の社会保障制度を維持することは不可能です。
東京財団上席研究員の原田泰氏の試算によれば、高齢者一人あたりの社会保障給付費を現状の水準で一定とし、名目GDPが生産年齢人口に連動して減少していくと仮定すれば、社会保障給付費の増加分を全て消費税で賄うなら、58.8%もの税率アップが必要と予測されています。
60%あまりにも上る消費税は現実的ではないことは明らかです。
こうしたことをうやむやにして、「将来にわたって安心」として消費税増税を推し進める野田首相は、詐欺に近いものがあります。
しかも、民主党は政権交代を果たした前回の衆院選では、むしろ消費税増税には反対の立場でした。
万が一、今国会で消費税増税法案が成立するようなことがあれば、「国民の承諾なしに増税が行われた」ということになります。
主権者である国民の承諾は選挙によって示されるものです。
このままでは、日本の民主主義がないがしろにされてしまいます。
増税の前にやることがたくさんあるはずです。
景気回復による税収の自然増、公的年金の見直し、高齢者の雇用拡大などです。
民主党・野田政権のこうした不誠実な態度は、国民の政治不信を募らせています。
野田首相は、増税を行いたいのであれば、早急に解散総選挙を行い、堂々と民意を問うべきです。それが民主主義のルールです。