90年代にアジリティーという言葉が注目されたことがありました。
言葉の意味は「俊敏性」です。余談ですがワンちゃんの障害競走をアジリティー競技会と呼称するそうです。今はこちらの方が有名なようです。
アジリティー或いはアジルが注目されたのは米国の製造業が復活するためには俊敏性が不可欠とされたからです。
俊敏性はビジネススピードを如何に向上させるかを意味します。
当時注目されたのが同時並行エンジニアリングなど製造業における生産初期段階の時間を短縮する手法で、今では当たり前になっています。
俊敏さの理想は瞬間的に商品(もの)が出来ることですが、当時はそこまでは考えられていませんでした。
ニットの立体縫製を可能にした島精機製作所が様々な影響を与えています。
私は高級ニット商品への適用しか思い浮かびませんでしたが、ナイキの「フライニット」に立体縫製の技術が採用されているようです。
この生産はコンピューターに直結しているので、新興国の労働力を利用して多数の部品を人手で組み立てるモデルを革新します。
同様な事例として福井県にセーレンという会社があります。
同社はインクジェット印刷技術を応用してスポーツファッション製品などを受注と同時に生産し提供しています。
日米繊維交渉当時から苦労していたアパレル業界が生産段階の俊敏性を取り入れる姿は、とても頼もしいものがあります。
大統領予備選挙では製造業の復活も争点となっています。
オバマ大統領は海外工場を閉鎖して国内回帰する企業への税額控除などの優遇措置の導入を訴えていますが、一方のロムニー氏は国外所得を免税(源泉地国でのみ課税)とすることで、米企業の国際競争力の強化、海外事業利益の国内還流を促す政策を訴えています。
国内の長期株式保有者の多くは株式配当を年金原資にしているので、雇用に影響がでることは分かっていても、円高を避けて海外に進出することは止むを得ないと考えています。
電力料金の上昇は製造拠点の海外移転の流れを更に速める流れを生み出しています。
俊敏性を活かして国内に残ろうとする、今や少数派になりかねない企業を、消費税増税にこだわる首相が日本から追い出す前に、首相自身を国民は“アジルに“退場させなければなりません。