次々と原発が定期点検のために停止し、再稼働の見通しが立たないまま、「脱原発」の動きが活発になっています。
このブログでも、再三にわたって「現状での脱原発は、日本にとって安全保障上の危機を招く」と指摘してきましたが、今回は、別の観点で「脱原発」の問題点を指摘します。
今回の福島での原発事故のように、放射能漏れはあってはならないことですが、岡山大学大学院放射線健康科学の山岡聖典教授によれば、「ICRP勧告では、(年間)100ミリシーベルト以下では身体に症状が生じるような放射線障害は起こらない、としています。むろん、がんになったという報告もありません(※)」とのことです。実際、福島では放射線による犠牲者は一人も出ておらず、原発事故による年間被ばく量も発がんリスクが上昇する100 ミリシーベルトには及んでいない地域が大半です。
一方、停止している原発の代替えとして、再生可能エネルギーによる発電量は、現状では全く不足しています。
そのため、電力各社は、非効率なため停止していた旧式の火力発電所を再稼働するなどして急場をしのいでいます。
しかし、この火力発電にも健康被害リスクが存在するのです。
国連のWHOによれば、世界で年間100 万人以上が大気汚染の犠牲になっています。
藤沢数希著の『「反原発」の不都合な真実』(新潮新書)によれば、そのうち3割程度が火力発電所の煤煙を原因とするものであり、日本では原発をゼロにすることで、大気汚染による死者が年間3,000 人増えるという試算もあります。
原発の再稼動は安全面に最大限配慮することは当然ですが、国民生活や産業への影響を考え合わせれば、日本では今後も原子力の活用は欠かせません。
※:ザ・リバティ2011年11月号