民主党の、税と社会保障の一体改革では、所得税と相続税の最高税率引き上げも検討されています。
左翼勢力を中心に「格差」の固定化を防止するためとして、相続税の強化を求める声がありますが、富裕層への課税強化がどのような経済政策もたらすか考えてみます。
現在の日本人の金融資産は約1471兆円あり(※1)、その多くが預貯金として所有されています。
そして、金融資産の61%は、60歳以上の方々によって保有されています(※2)。
確かに、資産課税や貯蓄税に関して言えば、一定の税収をもたらし、眠っている金融資産を動かす効果があります。しかし、この効果は、所得再分配として富裕層から高い税金を取る、ということではありません。
現在のようなデフレ下では、現金を保有するには有利な時です。
従って、金融政策を通じてデフレを脱却していくことが必要です。
そうすれば、株式市場への投資も増えますし、ご高齢の方々であっても、消費にまわしたり、子供に贈与したりする余裕が出てきます。
わざわざ資産課税や相続税を強化する必要もなく、通常のマクロ経済政策で対応可能です。
また、人間はいつか死ぬのであり、あの世に資産を持って帰れないので、相続税や資産税を強化するという「一生使いきりモデル」も問題です。
確かに、資産はあの世に持って帰れないという話は、宗教的にも真実です。
しかし、財産は、寄付などを通じて社会貢献するなど自らが決めればいいことで、政府による私有財産の没収に正当性はありません。
日本は既に、所得税の累進課税が存在し、高額納税者から低所得者への再分配は制度上確立されています。
そこに、資産課税や相続税強化が入ってくると、国家による私有財産の略奪に拍車がかかります。
本当に眠っている資金を動かしたいならば、相続税や贈与税は撤廃するべきであって強化すべきではありません。
大胆ではありますが、むしろ相続税と贈与税の撤廃を訴えもいいのではないでしょうか。
景気回復により経済が成長すれば、所得税や法人税などの税収が増えて、消費税の増税は必要なくなります。
税制はスリム化して可能な限り国家による統制を廃し、自由からの繁栄を基本とすべきです。
※1:日本銀行「資金循環統計」2011年9月20日速報版
※2:総務省「消費実態調査」