3月1日、北朝鮮がウラン濃縮や核実験などの一時停止を行う代わりに、米国が24万トンの栄養補助食品の提供などを行うとする米朝合意が明らかになりました。
北朝鮮は、金正恩氏の権力継承を確実にするため、4月15日の北朝鮮最大の祝日とされる「太陽節」に合わせて、食糧支援を引き出すとともに、ひとまず対外的な安定を確保する必要があったのではないかと推測されます。
しかし、その後、双方が発表した合意の内容に、いくつかの食い違いがあることがわかりました。
こうしたことから、今回も北朝鮮は、いつもの瀬戸際外交の一環で、合意を守らないのではないかとの懸念があります。
今までも北朝鮮は、自国の生存を確実なものとするために上手く立ち回り、核兵器と弾道ミサイルを開発し、それを外交交渉のカードとして使うことによって、食料や燃料などの支援を引き出して来ました。
現在、北朝鮮の国民は世界で最も貧しくかつ抑圧されているといわれていますが、こうした北朝鮮の存在を国際社会が許してきた理由の一つに、北朝鮮の地政学的な位置づけがあります。
朝鮮半島は、ユーラシア大陸において「内陸部国家」である中国やロシアと、米国のような「海洋国家」に挟まれた地域であり、これらの国家が直接対決をしないようにするクッションの役目をしています。
北朝鮮は、大陸側に位置しているので大陸国家である中国やロシアの支援を受けており、一方、韓国は海側に位置しているので海洋国家である米国や日本の支援を受け、それぞれが互いに牽制し合っているという構図になっています。
これが、6か国協議がなかなか機能しない理由にもなっています。
今回の合意のように、北朝鮮に対して人道支援も必要ですが、安易な食料支援は、北朝鮮の住民の人権を蹂躙する現体制を延命させるだけです。
権力を継承した金正恩氏は実績を積み上げておらず、そのことが権力継承を確立する上での不安要因になっている今こそ、このような均衡状態から脱し、北朝鮮の「終わりの始まり」をもたらすチャンスです。
直接的脅威を受けている日本こそが現状打破を仕掛けていく必要があります。軍事独裁国家が「核武装国家」となることを黙認するかのような無策の野田政権は即刻退陣すべきです。