2月1日、藤村官房長官は、政府民主党が当面非公表とした年金制度抜本改革の試算について、民主党が最新の将来推計人口を踏まえて作り直し、3月中を予定する消費税率引き上げ関連法案の国会提出前に公表するとの見通しを明らかにしました(※1)。
この試算は、1月6日に政府・与党社会保障改革本部が決定した「社会保障・税一体改革素案」の「最低保障年金7万円」の導入などの改革を行った場合、消費税率の10%への引き上げとは別に、2075年時点で最大で消費税率7%分の財源が必要となるとしたものです。この試算の存在が報道されてから、世論の反響が大きかったため、野田首相は世論の反発を警戒して、急遽、公表を隠蔽したものと見られていました。
財源の試算も示さないまま、「増税が必要」だという結論だけを国民に押しつけるようなやり方は許されるはずがありません。そもそも、民主党のいう「財政状態の悪化が、社会保障制度の破綻をもたらしている」という前提自体が間違っています。経済評論家の近藤駿介氏は、「景気低迷に伴う、賃金低下による年金保険料の収入の減少と、デフレ進行による運用利回りの悪化が年金破綻の危機をもたらしている。」旨を述べています(※2)。つまり、社会保障の財源問題の解決策は「増税」ではなく、「デフレ脱却」と「経済成長」なのです。
社会保障重視で国が経済活動に関与を強める「大きな政府」を志向する民主党政権によって、日本は重税とバラマキ型の国家に変えられつつあります。しかし、国が税金によって国民から富を収奪し、再配分の機能が増大する「国家社会主義」の下では、国民から自助努力の精神が奪われかねません。経済状況を悪化させる増税ではなく、デフレ脱却と経済成長をこそ最優先課題と位置づけ、これに取り組むべきです。
※1:2月1日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120201-OYT1T00671.htm
※2:「無責任な政治〜『適度なインフレ』を前提に設計された『現在の社会保障制度』を『消費増税』で維持すると主張する理解し難い理屈」http://blogos.com/article/29838/