英国のポンドの空売りで名を馳せたジョージ・ソロス氏が深刻になりつつあるユーロ危機を憂えています。(欧州の新財政協定はデフレスパイラルを招きかねない 日経ビジネス2012年1月27日(金))
その言葉を引用すると、「ドイツは財政的に非常に保守的な方向を取っている。一方、アングロサクソン諸国は今なおケインズに魅力を感じている。危機の根源には最初からずっと国家間の不均衡が存在する。これを是正するためには緊密な国際協調が必要なだけに、このような国家間の乖離は状況を極めて複雑にしている…..。ユーロ加盟国は事実上ドイツと同じ金利で借り入れをすることができた。各銀行はわずかな利ざやを稼ぐために、ユーロ圏内でも財政体質の弱い国の国債を喜んで購入してバランスシートを拡大させた」。
ソロス氏の状況は厳しいとの見立ては非常に分かりやすく感じました。さて、日本の国債に空売りを仕掛けてくる第2のソロス氏はでてくるのでしょうか?
日本化は悪くないとする日本肯定派もいれば、18ヶ月で日本国債は暴落するとの、否定派もいます。否定派は、GDP 229%、1000兆円もの政府債務と人口減少をその理由に挙げています。確かに、財務省から流れてくる情報を目にすればそのような結論になるのはもっともな気がします。
しかし...、何度も、何度も主張してきた通り、政府の資産は世界トップ・クラスの650兆円あります。だから、ネット(正味)でみれば負債はGDPの約7割になります。
政府は正味の話を逆手にとって、「国民の金融資産には住宅ローンが含まれていますから、民間の金融資産を正味でみれば、もう国債が消化できなるかもしれません。今ここで増税を決断されれば、名宰相として歴史に名を残すことになります!総理ご決断を!」と財務省の高官に洗脳されているのでは…..と、最近のどじょうを超えたなまず宰相の暴走を見ると思わず勘ぐりたくなります。 (*民間の金融資産に関して実際は、国民のローンは銀行の資産なのでこれを正味扱いするのは間違いです)
かつて、「ケインズ先生、長期的な視点でみて、わが国の経済はどうなるのでしょう?」との記者の質問に、「長期的にみれば….、人は皆死にますね」とケインズ氏は答えて、英国の記者団は大笑いになったそうです。同席していたドイツの記者が「聞きたいことに答えていない!」と憤慨したのを英国人記者は哀れんだそうです。国民性が現れていて面白いエピソードだと思います。
ユーモアは創造性の力を示しています。「正味で比較すべきことを、総額に置き換えたのは、賞味期限を過ぎた過去官僚の、私たちの“うっかりミス”でした」と訂正すれば、そのユーモア精神に免じて国民も許してくれるのではないでしょうか。そうでなけれっば、現内閣は“名宰相と優秀な官僚”ではなく、“歴史上最悪の悪代官たち”と呼ばれることになるのではないでしょうか。