野田政権が掲げる「社会保障と税の一体改革」は、「消費税増税で社会保障制度が維持できる」ということが謳い文句になっています。
しかし、1月23日になって藤村官房長官は記者会見で、消費税率を10%へ引き上げる政府の「社会保障と税の一体改革大綱素案」について、「特に年金は現行制度の維持にのみ焦点がある。将来に延長して計算していくと、(消費税率は)今のレベルで足りない」と述べ、2015年以降に10%よりも引き上げる必要があるとの見通しを示しました(※1)。
はたして、野田政権の「消費税増税で社会保障制度が維持できる」というのは、本当なのでしょうか。
エコノミストの原田泰氏は、「社会保障給付費と名目GDPの比率を見ると、1970年には『4.6%』に過ぎなかったものが、2010年には『24.6%』になっている。この比率は将来どうなるだろうか。社会保障給付費と名目GDPの比率は、『2010年24.6%』から『2055年54.0%』まで29.4%ポイント上昇する。消費税1%でGDPの0.5%の税収であるので29.4%ポイントを0.5%で割って『58.8%』の消費税増税が必要になる。こんな大幅な増税が実現可能とは思えない。」と述べています(※2)。
つまり、「社会保障と税の一体改革」の方針で社会保障制度を維持するためには、消費税10%どころの話ではなく、将来的には消費税60%になりかねないということです。
「消費税増税をしないこと」は無責任な考え方であるかのような論調もありますが、「消費税増税によって、持続不可能な制度を維持すること」の方が、よほど無責任な考え方であることがわかります。
よって、現在の社会保障制度は、抜本的に見直すべきです。
税金に依存する社会保障制度を構築するのではなく、「選択と集中」の原則に則り、必要な人にはセーフティネットを施すと共に、「個人が国家によって養われる」ようなバラマキ型の社会保障制度は改めるべきです。
※1:1月23日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120123-OYT1T00619.htm
※2:『WEDGE』1月19日号