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2012/01/23【戦略がないのが戦略とは悪い冗談としか思えません】

戦略がなければ戦いに勝てないというのが世界の常識です。途上国の衛星ビジネスに焦点を当てて、戦略的に技術開発を進めている企業の姿は心強いものがあります。民間に引っ張られるようにして、政府が国家戦略として宇宙開発に目をむけたのは、前進には違いありません。しかし皮肉なことに、戦略の無さは目を覆うばかりです。そもそも、当初の構想は「宇宙庁」だったのに省庁の思惑に引っ張られ「宇宙戦略室」で折り合いをつけたこと、或いは、小惑星探査機「はやぶさ」の後継機の開発予算を大幅に圧縮したことが、戦略の無さを証明しています。

【以下、引用】

◆宇宙ビジネス発射!――狙いは新興国、もっと安く、ロケット「より単純に」(日経ヴェリタス  2012/01/15)

日本もようやくスタートラインに立った宇宙ビジネス。新興国の需要という、莫大な市場が目の前に広がっている。一方、景気が不透明な中で、予算制約は各国に共通した課題。

いかにコストを抑え、競争力を高めるのかが課題だ。


◆安全保障との結びつきは世界共通の認識…日中の宇宙戦略(SankeiBIZ 2012/01/17)

宇宙空間はなお開発途上の戦略空間である。昨秋は中国が2つの宇宙船のドッキングを成功させて宇宙開発の一歩を画した。日本でも昨年は宇宙開発に関して2つの明るいニュースがあった。国際宇宙ステーション(ISS)プロジェクトの次期宇宙船長に日本人の若田光一氏が初めて任命され、内閣府内に宇宙戦略室の設置が決定されたというのだ。後者は遅まきながら宇宙開発への戦略的な取り組みの出発点となろう。

わが国の宇宙開発は決して遅れていたわけではなく、H2Aロケットなどは外国からは大陸弾道弾にも使えるロケットとして注目されていた。宇宙船の自動操作によるドッキング技術も米露に次いで1998年、太平洋上空550キロで「織姫」と「彦星」の実験に成功している

しかし日本の場合、宇宙開発に戦略性がない問題が指摘されている。例えば宇宙ステーション構想も日本は米露欧カナダとともに中心的役割を担い、15カ国が参加するISSに参加しているが、2020年以降はどうするのか、有人衛星の打ち上げを計画してこなかったのはなぜか、などの疑念が浮かぶ。

これに反して中国の宇宙開発は戦略的だ。地理的国境を越えて宇宙や海洋のような戦略空間への進出を中国は重視している。その延長で宇宙開発の狙いを国益追求において有人衛星を前提に自前の宇宙ステーション計画から月・火星探査、さらにはGPS計画など総合的に進めている。そして宇宙開発費は09年度で170億元(約2070億円)に上り、国内総生産(GDP)の成長に比例して増額され、21世紀になった10年間で倍増しているという。

さらに中国の場合、宇宙開発は核ミサイル開発と一体的に進められるなど軍事目的とのかかわりを重視する。安全保障を宇宙開発と結びつけることは、軍事革命を先導する米国の原動力が宇宙活用に依拠しているように、今や世界共通である。

わが国が宇宙開発は「平和利用に限る」との国会決議の後遺症を抱え、宇宙基本法を成立させながらも生かし切れていない事態は異常でさえある。

ISSが20年に終了する趨勢(すうせい)にあって、わが国の宇宙開発をどう進めるのか、同じ頃に中国の宇宙ステーションの稼働が見込まれる中、予想される米中角逐への対応も考える必要がある。翻ってわが国に21世紀の国益と発展にかけた宇宙戦略があるのか、力強い宇宙への挑戦が急務となっている。(拓殖大学名誉教授・茅原郁生)

【引用、以上】

民主党政権は三代続けて戦略の無さを証明しました。消費税増税に向け暴走する野田首相は「社会構造が神輿から肩車に変わるから増税しなければもたない」との論を持ち出していますが、増税ではなく人口をどう増やすかについて「戦略」を示すべきなのです。自らが語られたように、肩車になれば、消費税をいくら上げても社会保障システム(賦課方式)自体が破綻します。首相にはご自身の戦略を語って頂きたいものです。

子供手当てのお手本にしたフランス(人口増を実現)は子供手当てだけではなく、3人目の子供が増えれば扶養の係数が倍増する税制上のインセンティブ(減税)など様々な施策を戦略的に導入しました。40に近づきつつある団塊世代ジュニアの子作り意欲を上げなければならないのに、財務省の戦略にのせられて、このまま消費税を増税すれば、逆に彼らの意欲を下げる方向に働くことが分からないのでしょうか?

戦略とは未来に対する責任です。未来に対する責任を負うのが保守です、よって、野田首相は口先保守であることがはっきりしました。

戦略がないのが戦略とは悪い冗談としか思えません。まずその発言者が退場することが、あるべき国家の戦略だと確信します。