1月13日、米国の格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、ユーロ圏9カ国の長期国債の格付けを引き下げたと発表しました。
これを受けて、外国為替市場ではユーロ売りが加速していますし(※)、ドイツやオランダなど最上級の「AAA」評価の6カ国の信用を裏付けとしているユーロ圏の緊急支援制度である「欧州金融安定基金」の支援能力が低下しかねない懸念も生じています。かねてからの債務危機の克服に奔走してきたユーロ各国にとってすっかり水を差された形です。
そもそも、債務危機に際して打ち出した財政規律強化策は、ユーロ圏の財政政策を統合する動きですが、経済成長戦略などを十分に打ち出さずに、財政規律の強化だけでは対策としては不十分です。
そうした観点からは、今回のS&Pによる今回の格下げは、妥当であるように見えます。
しかし、金融システムは信用が命であるもかかわらず、今回の格下げは、金融システムの信用を破壊している部分があります。
格付け会社は、乗っ取り目的で帝国主義的侵略を図る性質があります。
日本でも過去、米国の格付け会社が山一證券や日本債券信用銀行を狙い打ちにするかのように一気に格下げし、信用不安を起こして破綻に追い込んだことがありますが、その格付け直後に、外資系企業が山一證券をはじめ次々と日本の金融機関を買収しました。
こうした観点で見ると、今回のユーロ圏の国債の引き下げには、ユーロ圏の国債の信用を低下させ、その国債を大量に保有する欧州の金融機関を弱体化させて、買収を狙っていると考えることができます。
また、もともとユーロは、世界通貨であるドルに対抗する目的で創設されているので、米国が巻き返しを図っているとの見方もできます。
米国の格付け会社は、過去、日本国債をアフリカのボツワナと同じランクに格付したり、サブプライムローンを大量に抱えた金融機関を最上位にランクしたりしました。
格付会社の格付はあくまで参考であり絶対的なものではありませんし、決して純粋に公平な立場で格付けをしているわけではないことも知っておくべきではないでしょうか。
※:1月16日付日本経済新聞http://www.nikkei.com/markets/kabu/market-focus.aspx?g=DGXNMSGD1600X_16012012000000