1月
12

2012/01/12【日本は円高を前提とした経済戦略を】

今年に入っても、円相場は対ドル・対ユーロで高値水準が続いています。 当然、円高は日本の輸出企業にとってマイナス要因となります。

2011年の日本の貿易収支は、大震災の影響もあって、5,710億円の赤字に転落しました。

この円高のマイナス面に目とやると、今後の日本経済は先行き不安に見えますが、円高には日本にとってプラスの面もあることも見落としてはならない点です。

例えば、2011年の日本企業による海外企業のM&Aが609件、684億ドルと、前年比78%増で過去最高になりました(※)。

過去、日本企業はバブル期に、米国の映画会社やロックフェラーセンターなどを買収して、世界をジャパンマネーが席巻しましたが、昨年のM&Aはそのバブル期をしのぐ規模になっています。

ここ数年のM&Aの特徴は、国際的な競争を生き残るために、海外企業を買収してグローバルな展開を図るというもので、バブル期の象徴的な意味合いの買収とは異なり、名より実を取る企業戦略が表れています。

世界経済は、新興国のみならず米国も自国通貨を安くして、貿易で稼ぐ戦略を取ろうとしています。

しかし、日本は日銀が必要な金融緩和をしていないため、円は相対的に高くなっているのです。

これは、日銀の無策が結果的に円の強さに一役かっているといってもいいかもしれません。

確かに、急激な円高は輸出企業に悪影響を与えるので望ましくありませんが、今後の日本経済の戦略を立てる上で、円安による貿易収支の拡大といった新興国的なモデルでは、挫折する可能性が高いと思います。

日本は貿易立国というイメージがありますが、現在の日本のGDPのうち輸出依存度は16%程度と、先進国の中では最低水準です。

日本は、輸入による内需拡大など、長期トレンドとして円高傾向を前提とした戦略の組み立てが必要です。

更に、世界経済が落ち込む中で、円が国際的な基軸通貨として成長する可能性についての戦略も打ち出してはどうでしょうか。

※:トムソン・ロイター調べ