民主党は、消費税率の引き上げについて、自民党などに与野党協議に応じるように求めていますが、自民党は現時点では応じない姿勢を崩していません。しかし、自民党のベテラン議員を中心に、協議に応じるべきとの声が上がり始めており(※)、自民党も民主党同様に一枚岩でないことを示しています。
もともと、自民党は消費税増税そのものに関しては賛成であるので、事態の推移によっては、消費税増税を後押しするマスコミとも相まって、増税についての「大政翼賛会」が構築される可能性があります。
民主党は、国家の収入にあたる増税にのみ並々ならぬ意気込みを示していながら、収入の使い道や、出費に無駄が無いかという議論は、政権交代時の勢いとは裏腹にトーンダウンしています。
例えば、「日本は公務員天国である」という指摘に対し、民主党の公務員制度改革は???なものばかりです。実際、大和総研の「公務員人件費の国際比較2005年」によれば、日本の公務員は民間従業員の2.1倍もの報酬を得ていますし、若林亜紀著『ドロボー公務員』によれば、内閣府SNA調査に基づく一人当たりの雇用者報酬では、産業別の一人当たり平均報酬は、農林水産業が206万円、製造業522万円、金融保険657万円、公務員1,001万円となっています。
極めつけは昨冬のボーナスで、国家公務員は4.1%の増額となり、みずほ証券の調べでは国と地方の公務員のボーナス平均は76.5万円と、民間の平均額37.8万円の2倍以上となっています。しかし、民主党は、自治労や日教組といった公務公益関係の労組が支持団体であるため、肝心の「公務員改革」は表面的なものに終わっています。
国民からは、増税につぐ増税で負担が増している一方で、公務員だけは逆行しています。そして、既に、所得税と個人住民税を合わせた個人所得課税の最高税率は50%であるにもかかわらず、更に税率を上げようとしています。
憲法は『私有財産の不可侵』(憲法29条1項)を謳います。これは公務員に対して言っているわけであって、公務員は国民の私有財産を侵してはならないはずです。これは憲法13条の『個人の尊重や幸福追求の権利の尊重』にもあたります。50%を超える個人所得税率は憲法18条で禁じる『奴隷的拘束』に近く、ハイエクの言う『隷従への道』につながります。
野田政権が目指す「大きな政府」は国民を幸福にはしません。「大きな政府」がもたらすものは、経済の更なる落ち込みと、貧しさの平等であり、活力のない社会です。
よって、公務員を守るための増税に対しては疑問です。
※:1月7日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120107-OYT1T00273.htm