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2012/01/09【所得税の最高税率アップは、なぜダメなのか】

経済成長による税収増を図るのではなく、不況下での増税に向けて異常ともいえる執念を見せる野田首相ですが、焦点の当たっている消費税の増税の他に、所得税の増税も検討しています。

民主党は先の税制調査会と一体改革調査会の合同総会で、所得税や相続税の最高税率を上げるなど富裕層を対象にした増税も了承しました。

具体的には、所得税の最高税率を現状の40%から45%に引き上げることを検討しています。

一見、もっともと思われるこの「一般の人よりも、お金を持っている人からどんどん取ってしまえ」という発想は、実は国の発展にはつながらず、衰退の道につながっているのです。

なぜならば、この所得の再分配機能の強化は、人の何倍も働き、長年努力してきた高所得者の働く意欲を失わせると同時に、低所得者に対しても「働かなくてもそこそこはもらえる」といった具合に働く意欲を失わせます。

その結果、富裕層が、税金の安い香港やシンガポールに移住する「資本逃避」が現実となり、一段と税収が下がります。多額の税金を納めている人をいじめても、中長期的には国富は増えないのです。

しかし、こうした所得の再分配の危険性を理解していないと、高所得者の人口比は小さいので、選挙の際に、高所得者の課税強化を訴える候補が有利になりがちです。

野田首相は、まさにこの論理で、低所得者に負担の大きい消費税増税の批判を緩和するために、迎合主義的に所得税の最高税率を上げることを狙っているのです。

裕福層を狙った課税は、まさに社会主義の考え方そのものです。

保守の顔をしている野田首相は、実はマルクスが『共産党宣言』で打ち出した「強度の累進課税」と発想が同じなのです。

日本は既に、所得税と個人住民税を合わせた個人所得課税の最高税率は50%であり、政界有数の高い税率です。これでは、憲法で禁じられた個人資産の略奪の疑いさえあります。

英国のサッチャー元首相は「お金持ちを貧乏にしても、貧乏な人はお金持ちになりません」と言い切り、福祉国家路線を大きく転換し、自由な競争社会に改革することで、「英国病」とまで言われた英国の国力を復活させました。

今の日本も、目指すべきは、「富の分配」ではなく、「富の創造」なのです。