TPPへの参加は日本の安全保障上の観点があります。食糧安全保障はもちろんですが、日米同盟を維持・強化する上でも重要なのです。
米国がTPPを進める背景には、中国のアジア太平洋地域への経済進出やそれらの地域に影響力を行使することに対する危機感があります。中国は、周辺地域への軍事的プレゼンスを拡大するとともに、ASEANの枠組みを核として、米国を抜きにして中国主導のアジア自由貿易圏の構築に乗り出しています。つまり、アジアを舞台に米国と中国の覇権争いが始まっているのです。
この覇権争いに、世界第3位の経済大国である日本が、どちらの側につくかにより趨勢が決まります。しかし、日本が民主主義や自由貿易を貫くのであれば、中国側につくという選択肢はありません。普天間基地移設問題で、ギクシャクした日米関係を再構築する意味でもTPPへの参加は重要です。
11月27日付読売新聞で、JR東海会長の葛西敬之氏は「TPPは日米同盟と表裏一体」と題して「中国は、あらゆる人的影響力を駆使して日本の世論を分断し、日本からのコメの輸入拡大、日本へのレアアースの輸出緩和など経済的利益で誘って日本のTPP参加を阻止し、中国主導の東アジア共同体に取り込もうとし続けるだろう。一方では与野党それぞれを内部分裂させ、アメとムチで企業を利益誘導し、基地反対運動を煽るなど、TPP阻止の動きが強まるだろう」と、傾聴に値する指摘をしています。
日本がTPPに参加すれば、中国は、日本に揺さぶりをかけて国論を分裂させ、報復措置を打ち出してくることが予想されます。そうなれば、日本も強い態度を示す必要があります。先の尖閣諸島での中国漁船衝突事件では、民主党政権は中国にいいようにやられ、日本国の主権を放棄するようなことまで行っています。今までのような民主党政権の姿勢では、中国の態度はますますエスカレートします。
ようやく、28日には、政府が武器輸出三原則の緩和に向けた議論を始めました(※)が、これに加えて非核三原則の見直しなど、中国の報復措置に対するこうした対抗手段を用意しておくことは、外交交渉上たいへん重要です。
※:11月28日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111128/plc11112821030009-n1.htm