11月11日の記者会見で、野田首相は、「TPP交渉参加に向けて、関係国との協議に入ることにした」と述べました。
野田首相は12日からハワイで開かれるAPEC首脳会議に参加し、TPPについて各国と協議することになります。
TPPの問題について、私たち幸福実現党は「参加すべき」との立場ですので、野田首相の決断をとりあえず支持したいと思います。
しかし、野田首相は、ストレートに「交渉に参加する」と言わずに、上記のような回りくどい言い方をしたのでしょうか。
それは、民主党内の慎重派に配慮した表現だとも考えられますが、穿った見方をするならば、後になって「『交渉に参加する』とは、一言も言っていない」などと言えるように、逃げ道を作ったのではないかとも取れます。
TPP参加の是非については、これだけ国論を二分しているような状態なので、野田首相としては「国益」だけではなく「党益」を考慮せざるを得ないということなのでしょう。
しかし、真の政治家ならば「国益」を第一に考えるべきです。そもそも、民主党内だけでなく、TPP参加への慎重派、推進派ともに、TPP参加の是非について論じる際に「国益」という言葉を使っていますが、その国益の定義があいまいで、何が国益であるかを論じている様子が見られません。
皆さんもお気づきの方も多いと思いますが、個別の利益や権益を国益と称している場合が多いように思います。
では、国益とは何か、以下の3点に整理してみました(※)。
1.安全保障に関わること
2.経済における繁栄を維持、発展させること
3.国民に受け入れられる価値を維持・発展していくこと
以上です。
1番目については、軍事的な意味の防衛だけでなく、エネルギーや食料など自国民の安全を脅かす対象への攻撃からの安全保障です。
2番目については、文字通りなのですが、生産者だけではなく、消費者の利益も考慮しなければなりません。
3番目については、国民全体の精神的な紐帯としての文化や伝統が維持されることは国益の一要素であり、文化的破壊や文化的侵略は国益を損ないます。
こうした観点から、TPPの参加を議論しなければなりませんが、民主党政権は政治を行う上での根本姿勢が党内で確立されていないので、ドタバタ劇を演じて機能不全に陥っています。
民主党内には、日本は欧米を中心とした自由主義、資本主義文化圏を維持する勢力と、中国を中心とした共産主義、唯物論文化圏に入るべきという勢力があるようにさえ感じてしまいます。
まずは「国益とは何か」を国民的な議論によって明確に定義した上で、TPP参加交渉を進めるべきだと思います。