10月26日に総務省は、衆院300選挙区の「1票の格差」の試算を公表し(※:10月26日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111026/elc11102621400001-n1.htm)、その最大格差は2.5倍以上と2009年の衆院選時の2.3倍から拡大していることが分かりました。
今年3月の最高裁の判決では、2009年の衆院選時の2.3倍の格差を「違憲状態」とし、現行の選挙制度の「1人別枠方式」を「投票価値の格差を生じさせる主要な要因」としています。
こうした状況を受けて、現在、与野党間で「1票の格差」の是正に向けて選挙制度改革の協議が行われていますが、合意の目途は立っていません。
「1票の格差」を是正することは、主権者である国民の民意を政治に反映させるためにたいへん重要であり、喫緊の課題でもあります。
しかし、与野党間の協議では各党及び各議員の思惑が先行し、本質的な問題が見過ごされているようです。
その本質的な問題とは、「1票の格差」が無くなれば、それで本当に日本の政治が良くなるのかということです。
現行の小選挙区制の導入に当たり、「金権政治が無くなり、クリーンな政治が実現する」「二大政党制による政権交代が可能となる」など、小選挙区制を導入すれば、日本の政治が良い方向に変わるとうたわれましたが、その結果ははたしてどうだったでしょうか。
民主党は政治と金の問題で相変わらずの状態ですし、二大政党といわれる民主党も自民党もそれぞれ2~3割程度の支持率しか得られていません。
先の衆院選や参院選では、ほとんどの候補者が、外交も安全保障も、日本の将来像など国家の大計も語らずに、狭い選挙区への利益誘導や地方議員選挙かと疑うようなマニフェストを掲げるなど、候補者の人物が小粒となってしった印象があります。
また、2009年の総選挙の小選挙区では得票率47%の民主党が74%の議席を獲得したことからわかるように、小選挙区制ではいわゆる「死に票」が増えます。
これは、2005年の郵政解散選挙の際も、小選挙区では得票率が48%の自民党が73%の議席を獲得していることからもわかります。つまり、小選挙区はそれだけ民意を反映していないと言えるのです。
更に、二大政党制は、二大政党以外の主張があまり伝えられず少数政党の「政治参加の自由」を妨げる要因となっていますし、ねじれ国会による政治の空白も生んでいます。
このように、「1票の格差」の是正という前に、国会が機能不全化していることにより「1票」の価値そのものが無駄にされているような状況こそが問題なのです。よって、大所高所から国家を論じることができる政治家を輩出できるように、選挙制度を根本的に見直す必要があると考えます。