ジョブズ氏の創造性に何を学ぶか(日本経済新聞 朝刊社説 2011/10/07より)
米アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏が死去した。
35年にわたり世界の情報産業をリードし、数十億人の生活を変えた功績は大きい。
パソコンや携帯音楽プレーヤーの開発に始まり、最近はスマートフォン(高機能携帯電話)や多機能情報端末も加わった。
デジタルの劇場アニメも彼が先べんをつけた分野だ。そうした新しい商品をなぜ次々と生み出せたのか。
アップルの設立は1976年、大型汎用機の全盛期だ。
個人のコンピューターが欲しいと考えたジョブズ氏はガレージでパソコンを開発。米IBMがパソコンに参入すると「マッキントッシュ」で対抗した。
その後、自ら採用した経営者に会社を追われるが97年に経営に復帰。
インターネット接続に優れたパソコンを投入して身売り寸前だった会社を立て直すと、今度は音楽ネット配信や携帯電話事業に進出した。
一貫していたのは、消費者を豊かにするライフスタイルの提案というビジョンだ。
パソコンも携帯端末もその手段と考え、開発には自ら情熱を傾けデザインや使い勝手のひとつひとつに注文をつけた。
ジョブズ氏の創造性はユーザーの心にも通じた。
病に倒れた後も新製品発表のために壇上に上がり、聴衆の共感を得ようと努めた。商品の開発だけでなく、コミュニケーションの面でも天才ぶりを発揮した。
結果はどうか。ジョブズ氏は復帰直後に「目標はソニー」と語っていたが、日本が得意とした情報家電分野で世界の覇権を握り、株式時価総額でも世界一の座を獲得した。
56歳という年齢はあまりにも早い退場だったが、地盤沈下が指摘される日本の情報家電業界には、ジョブズ氏にならうことが多数ある。
まずはグローバル市場をにらんだ商品展開だ。携帯端末の成功はそうした広い視野に基づく。
デザインも重要なポイントだ。アップルの製品は、しゃれた箱を開けた時から新しい体験が始まる。ジョブズ氏が最も重視した点である。
既成概念にとらわれない、目標達成のための工夫も重要だ。音楽を1曲99セントで販売できたのは、ジョブズ氏が音楽業界の同意を取り付けたからだ。
逆にいえば、異才を受け入れる社会的な下地があったからこそ米シリコンバレーは成長した。
折しも日本では家電見本市の「CEATEC(シーテック)」が開かれている。
しかし、来場者を感動させる新商品がどれだけ出展されているだろう。ジョブズ氏に日本はもっと学ぶことがあるに違いない。
【感想】ipod2代→iphone3Gと4、macbook、ipad、imacと7代連鎖のMACERなものですから、ジョブズ氏の死去は非常に残念です。