【ハマス:「休戦破棄」宣言イスラエル軍の空襲受け】2011年8月20日 毎日よりhttp://mainichi.jp/select/today/news/m20110820k0000e030019000c.html
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの軍事部門・カッサム旅団は19日、イスラエルとの非公式な休戦を「破棄する」と系列ラジオで発表した。
18日にイスラエル南部エイラートで起きた路線バスなどへの銃撃事件を機に本格化したイスラエル軍のガザ空爆に報復を宣言した形だ。
空爆による死者は15人に達した。イスラエル軍によるガザ侵攻が09年1月に終結した際、ハマスは非公式な休戦を宣言した。
ガザからの情報によると、カッサム旅団は19日夜、この休戦を破棄すると発表、全パレスチナ武装組織に対して、イスラエルへの反撃を呼びかけた。ハマス報道官はロイター通信に発表は「公式な立場ではない」と説明している。
ロイター通信によると、18日のエイラートでの銃撃事件ではイスラエル側8人が死亡。イスラエル軍の報復空爆によるガザの死者は少年3人を含め15人に上った。
ガザの武装勢力は18日夕以降、イスラエル領へロケット弾計24発を撃ち込んだが、ハマスは銃撃事件とロケット弾攻撃への関与を否定している。
ハマスの内部には、イスラエル軍の攻撃激化を恐れて、休戦を維持したい勢力もある。
だが、カッサム旅団はガザ住民の不満の高まりなどを受け、休戦破棄を宣言せざるを得ないと判断したとみられる。
引用、以上。
中東のジャスミン革命によって世界的に不透明な不況感が漂ってくる可能性がまた出てきました。政治的にもイスラエルの消滅の危機が出てきました。
中東諸国のジャスミン革命が“ブラック・スワン”、すなわち、先の見えない不確実性を生み出しており、イスラエルとアラブ諸国の関係が緩やかに悪化、イスラエルの地政学的リスクが高まっています。
18日に起こったエイラートでの銃撃事件への関与を否定していたハマスですが、軍事部門のカッサム旅団の休戦宣言破棄により、イスラエル国内のテロ攻撃の脅威は確実に増加しつつあります。
また、今回のイスラエルへの攻撃を行った「民衆抵抗委員会」の正体も不明瞭なままです。
このため、これまでは小康状態を保っていたイスラエル・パレスチナ関係も流動的なものとなります。
今後予測されるシナリオは2つあります。
1つ目は今回の襲撃を行った人民抵抗委員会がハマスとは関係が薄く、エジプト・イスラエル関係を混乱させ、シナイ半島を不安定な状態に置くことを狙っている場合です。
エジプトの政変以降、イスラエルとエジプトの関係は緩やかに悪化し始めており、これが更なるエジプトとイラン間の関係強化につながることになり、イスラエルの伝統的な対立構造を悪化させる原因になります。
2つ目は人民抵抗委員会がハマスと関係があり、休戦のため、表だって攻撃できないハマスの代役を務めた場合です。
このシナリオはイスラエルの諜報機関「シンベット」が指摘していることです。
パレスチナは9月にも国連での国家承認を求める動きを加速させており、この情勢下でのイスラエル軍によるガザ攻撃はパレスチナ国家承認阻止を狙うイスラエルにとっては国際社会にマイナスイメージを植え付けることになります。
これらのシナリオに共通してイスラエルの抱える脆弱点はガザ地区(シナイ半島への玄関口)で戦闘行動を行わねばならず、パレスチナ人達からの反感をさらに買うことになることです。
中東・北アフリカ地域が不安定な情勢にあるなかで、イスラエルもその混乱に巻き込まれつつあります。
日本としてもこの騒乱がどのように国益に影響するか分析していくことが求められます。