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2011/07/14 【緊急会見で延命?脱原発に国益を考えないという本性が見えたり!】

【菅首相の「脱原発依存」発言は無責任だ】2011年7月14日 日経より

菅直人首相が13日に記者会見し「原子力発電に依存しない社会を目指す。将来は原発のない社会を実現する」と語った。

政府・与党で十分な議論をしないまま政策の大転換を口にし、代替エネルギーに関する十分な説明もなかった。国民生活などへの影響の大きさを考えれば、首相の発言は無責任である。

首相は政策転換の理由として「原子力事故のリスクの大きさを考えたときに、これまで考えていた安全確保だけでは律することができない技術であると痛感した」と強調した。

電力不足への対応に関しては「節電の協力などを得られれば十分にこの夏、この冬についての電力供給は可能であると耳に入っている」と述べるにとどめた。

定期検査中の原発の再稼働の時期は明確にせず、電力の安定供給にどう責任を果たすのかという疑問には答えなかった。

政策を決定するうえで国民の安心や安全を重視するのは当然だ。

ただ電力の約3割を担ってきた原子力への依存度を引き下げるのであれば、代替エネルギーをどうするのかや、温暖化ガスをどう減らすのかを含めた総合的な戦略が欠かせない。

太陽光や風力など再生可能エネルギーを増やしていく努力は重要である。主要国の中で日本は自然エネルギーの投資で大きく遅れ、水力を除くと電力供給の約1%をまかなっているにすぎない。政策を総動員するのは当然だろう。

一方で気象状況に左右される自然エネルギーは不安定で、現状では発電コストも高い。

火力発電を増やせば天然ガスや石油の輸入経費がかさみ、国際的に割高とされる電気代の一層の値上げを招きかねない。国際競争力が低下し、産業の空洞化に拍車をかける恐れがある。

首相の原発事故をめぐる対応は一貫性を欠いてきた。5月には中部電力の浜岡原発の停止を要請。他の原発は再稼働に向けて自治体との調整を進めたが、突如として全原発のストレステスト(耐性調査)の実施を決めた。

全国知事会は12日にまとめた緊急提言で「政府は場当たり的な対応に終始し、国民の不信感はかつてなく高まっている」と指摘した。

今回も議論の経過が全く見えないまま、重要な政策転換が発表された。

首相は震災復興や原発事故などの対応に一定のメドがついた段階で退陣すると6月に表明した。20~30年後をにらんだ国の重要政策の方向付けを行う立場にない。

中長期的な国家戦略は新政権の下で、腰を落ち着けて議論するのが筋である。

[関連記事]【福井県知事「政府見解か」脱原発依存の首相発言を批判】2011年7月14日 日経より

菅直人首相が13日の記者会見で「原発に依存しない社会」を目指す考えを表明したことに対し、同日記者団の取材に応じた西川一誠福井県知事は、「個人としての気持ちを言っているのか、政府の見解なのか、分からない」と述べた。

また、石川県の谷本正憲知事は、「詳細な内容や具体的な推進方策、スケジュールなどについてわかりやすく説明し、国民の理解を得ていただきたい」とのコメントを出した。

西川知事は、菅首相が表明した原発依存度を下げ、将来的には原発をなくす「脱原発依存」について、「様々な人との議論を踏まえて具体的なプロセスを示すことが必要だ。技術立国で資源的にも厳しい日本は今後どうやっていくのか」と指摘。

さらに自身が目指すものが「脱原発」ではないと言明。その上で、「時間をかけてエネルギーの多元化を求めたい」と付け加えた。

また、今夏、今冬に必要な電力供給が可能という首相の認識について、谷本知事は「具体的な方法を説明するとともに、国民生活や経済活動に支障をきたすことがないよう、国の責任において万全を期していただきたい」とコメント。

西川知事も「どういう生活水準と生産レベルでやろうとしているのか」と疑問を呈した。

福井県敦賀市の河瀬一治市長は「立地自治体や経済界の声が考慮されておらず時期尚早」と指摘。「当面、基幹電源としての原発は必要で、敦賀原発3、4号機の増設計画の中止は考えられない」とけん制した。

北陸電力は13日、首相発言について「エネルギー資源の乏しい我が国にとって、原子力発電の果たす役割は引き続き重要なものと考えている」と主張。「エネルギー政策の見直しは技術面での検証や、我が国のエネルギー需給状況などの現実を踏まえた十分な議論を期待したい」とコメントを出した。

関西電力は「国のエネルギー政策の大幅な見直しは我が国の将来の根幹に関わる極めて重要な問題。方向を誤れば、大きな禍根を残す」とのコメントを発表。

「データの検証をもとに国民的議論を十分積み重ねたうえで、結論を出すべき課題」として、首相の「脱原発依存」表明は性急との見方を示した。

引用、以上。

昨日の菅首相の「脱原発宣言」を受けて、産業界や自治体からの反発が強まっています。

記事にもありますように、原発の代替となるエネルギーをどうするのか、全く具体案が出されておらず、菅首相は思いつきで政策の大転換を打ち出したとしか思えません。

原発の代替エネルギーの確保は極めて難題で、政府としても模索している最中での菅首相のいきなりの発表でした。

そもそも、再生可能エネルギー(自然エネルギー)で、原子力エネルギーを代替することは不可能であることが菅首相には分かっていません。

ドイツはフランスから原子力の電気を輸入でき、かつ、国内に石炭資源を有するため石炭火力が基幹電源になっています。また、天然ガスの40%をロシアから輸入しており、これを活用しています。

また、ドイツは自然エネルギーの大量導入により、電気料金が毎年大幅に上昇しています。脱原発により、今後は南北の送電線の増強が必要となるため、これによっても電気料金の上昇が懸念されています。

「脱原発」を実現すればドイツのみならず、ドイツが原因となってヨーロッパ全体に大規模停電が起こることも指摘されています。

今後、ドイツの国力は低下していくことが予測されます。

そもそも、原子力と、風力や太陽光などの自然エネルギーは、発電量や安定供給面での品質が著しく劣ります。特に、日本の気候では、天候による変動が大きく、現状では自然エネルギーは基幹エネルギーにはなり得ません。(蓄電池で対応するとコスト的に成り立ちません)

また、火力で対応するならば、石油価格の高騰、施設の不足、CO2の激増に加え、シーレーン封鎖の危険性など、エネルギー安全保障の問題があります。

エネルギー政策の立案には、安全性だけではなく、コスト、安定性、エネルギー安全保障などの要素を考慮に入れることが不可欠ですが、菅首相は、これらの観点が完全に抜け落ちていると言えます。