【経団連が原発推進求める提言発表―国内空洞化を懸念】2011年7月12日 産経より
経団連は12日、原子力発電推進を求める提言を発表した。菅直人首相の指示で政府がエネルギー政策の見直しに着手したため、経済界の意見を明確にするのが狙い。
提言は日本の産業界の国際競争力が低下する中、国内空洞化を避けるためには「今後5年程度の安定した電力供給が不可欠」として、安易な再生エネルギーの導入といったコストや電気料金を押し上げる施策を慎むべきとしている。
提言はこのまま電力不足が続けば企業活動や雇用維持の足かせになると指摘。
今後の見通しが立たなければ生産拠点の海外移転や国内新規設備投資の抑制が避けられないとして、当面の電力供給確保に向け5年程度の工程表の策定を急ぎ、定期点検終了後の原発の早期稼働や火力発電の燃料となる石油や液化天然ガス(LNG)などの円滑な調達などを求めた。
そのうえで2020~30年に向けた中長期的視点で各エネルギーの長所・短所を踏まえたベストミックスを検討すべきと提案。
安全確保を前提に原発を着実に推進するほか、火力発電の高効率化や日本の自然環境に合った再生可能エネルギーの導入などを検討すべきとした。
その際には「実現性やコスト負担のあり方を検証することなく数値目標を掲げるべきではない」としている。
引用、以上。
経団連の米倉会長が、原発のストレステストについて「こんなばかな話、考えられない」と机を叩いて怒ったというニュースをお伝え致しましたが、“強制節電の夏”が始まり、民主党と蜜月関係にあった経団連も「原発の維持推進こそが死活問題」であることに気づき始めたようです。
経団連は、12日に発表した提言においては、電力の安定供給や発電コストの観点から「引き続き重要」と明記し、安全性確保を前提に国民の理解を得ながら着実に推進する必要があると明記しました。
また、電力不足について「復興はおろか企業活動や雇用維持の足かせになる」と指摘。エネルギー供給の見通しが立たなければ、「日本経済の空洞化の加速は避けられない」と警告しています。
実際、このまま原子炉を再稼働ができなければ、電力の「2012年問題」が発生することは確実です。
現在、稼働中の17基の原子炉も今後、順次、定期検査に入るため、このまま原子炉の再稼働ができなければ、来年2012年の春、全ての原子力発電所が停止します。
“脱原発”を表明した西ドイツでさえ、「2020年までに段階的に廃炉措置を行う」という移行期間を十分に設けており、いきなり、来年春に全原発を停止するといった無計画で、国家を壊滅させるようなエネルギー計画は考えてもいません。
財団法人日本エネルギー経済研究所が発表した「原子力発電の再稼働の有無に関する2012年度までの電力需給分析(※)」によれば、全ての原子炉が停止した場合、来夏は全国総計の総発電能力が最大消費電力を7.8%下回り、全国規模で電力不足が発生することは避けられません。
※(PDF)http://eneken.ieej.or.jp/data/3880.pdf
電力の安定供給のためには、最低限5%程度の予備率の確保が必要なため、全国規模で12.4%の大幅な節電が必要となり、「産業活動には甚大な影響が避けられない」と分析しています。
地域によっては設備能力の100%を超える石油火力の稼動が必要になる場合もあり、現実的には、そのような高稼働は不可能で、大幅な電力使用制限令の発動やブラックアウト(大停電)に至る危険が高くなります。
原子力発電の再稼働がない場合、2012年度の火力燃料(石炭・LNG・石油)の消費量は劇的に増大し、2010年度比3.5兆円増加します。
その場合、標準的な家庭の電力料金は1ヵ月当たり1049円値上がりし、「わが国の産業競争力への極めて深刻な悪影響も懸念される」と分析しています。(同研究所の試算では大幅な需要増加による燃料価格の上昇は勘案されていません。実際には、電力料金は更に上がるはずです)
電力不足で企業は節電を強いられ、生産活動が落ち込んでいる中、菅首相が打ち出した全国の原子力発電所へのストレステストが、さらに大幅な電力不足をもたらし、産業の空洞化を加速させています。
電力料金の値上げは世界市場で競争する企業にとっては大きな重荷であり、実際に多くの企業が海外脱出を真剣に検討し始めています。
産業空洞化が失業者の増大や消費の低迷に拍車をかけることは避けられません。「日本沈没」を引き起こす首相として、菅直人氏をストレステストにかけ、“欠陥品”として辞任させるべきです。