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2011/06/25 【米軍アフガン撤退の前途多難】

【米軍アフガン撤退の前途多難】2011年6月24日 THE WALL STREET JOURNALより

オバマ大統領は22日夜、ほんの18カ月前に自らが追加派兵したアフガニスタン駐留米軍を、その目的が達成される前に撤退させるという異例のテレビ演説をした。その背景に「任務達成」と書かれた横断幕はなかった。

退任間近のロバート・ゲイツ米国防長官が年内の形だけの撤退について言及したのはつい最近のことだった。

オバマ大統領は今回、軍事顧問たちの進言を却下し、再選を見据えて大規模撤退を主張するジョー・バイデン副大統領を含む政治家将軍たちの意見を支持した。

これにより、戦場にいる本物の将軍たちは、大慌てで反政府武装勢力を制圧するというミッションを完遂しなければならなくなった。それが可能だとしての話だが。

オバマ大統領は米軍の撤退を7月に開始し、年末までに1万人(3‐4個旅団)を引き揚げると述べた。増派部隊全3万3000人の帰還は来年夏までに完了し、撤退はその後も着実なペースで進むという。

つまり、米軍は、増派規模がピークに達した後、(戦闘の激化が予想される)厳冬明けを1度経験しただけで縮小に向かい、その他の6万8000人の撤退も実施するというのである。

大統領は北大西洋条約機構(NATO)とアフガニスタン政府とですでに合意している2014年末までの治安維持権限移譲完了を繰り返し強調したが、この期限が持つ意味はもはや低下したと言える。

大統領は連合軍の成果として、アフガン南部のヘルマンド州、カンダハル州でのアフガン軍の増強、パキスタンにあったテロリストたちの隠れ家の根絶などを挙げたが、米軍はこうした勝利を一時的なものと理解し、優勢を強めるためにも戦闘に携わるすべての旅団の駐留継続をホワイトハウスに働きかけていた。

この夏、デビッド・ペトレアス将軍からアフガニスタン駐留米軍の司令官という立場を引き継ぐジョン・アレン海兵隊中将には難しい仕事が待って
いる。

南部やそれ以外の地域で獲得した陣地を守りながら撤退を実施する一方で、まだ北部に残っているイスラム原理主義組織タリバンの拠点を攻撃しなければならないのだ。

増強しつつあるとはいえ、アフガン軍が米軍の穴を埋めるのには限界がある。残された米軍兵士たちのリスクはこれまで以上に大きくなるだろう。

兵士にとって長期間の駐留が負担になることは事実である。

それでも、早めに撤退することでタリバンが反撃に転じて自分たちの犠牲が無駄になるくらいなら、残って任務を完遂した方がいいと話す兵士もいる。

この撤退を正当化したいオバマ大統領は、国際テロ組織アルカイダ掃討作戦の成果を繰り返し強調した。

しかし、ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害を含む成果のほとんどは、アフガニスタンで上げられたものである。

大統領はテロリストたちの隠れ家への攻撃に関して、引き続きパキスタンに協力を求めていくと述べたが、今回の撤退計画の前倒しでその説得は難しくなる。

もはやパキスタン軍がアフガニスタンのタリバンに対して攻撃をしかけることはないだろう。

パキスタン政府は、アフガニスタン政府とタリバンの指導者たちの和解を押し進めようとするはずである。

22日夜の大統領演説にいちばんほっとしているのはタリバン指導者たちであろう。

大統領は撤退の決断に至った理由として、増兵部隊の成果を強調していたが、その裏にははっきりとした政治的なメッセージがあった。

「アメリカ国民の皆さん、戦争の流れは引き潮に変わりました。今こそ、本国で国造りに専念するときなのです」オバマ大統領は、ジョージ・W・ブッシュ前大統領の戦争を終わらせ、イラクとアフガニスタンから兵士を帰還させた最高司令官という立場で再選に向けたテーマを提示していた。

オバマ大統領がイラクから駐留米軍を撤退させることができたのは、ブッシュ政権時代に決まった増派が成果を上げていたからである。

先走った増派と大統領選をにらんだ撤退にもかかわらず、米軍の将軍たちがアフガニスタンでも同じような成功を収められることを願うしかない。

引用、以上。

アフガン撤退を活発化させている米国ですが、アフガン情勢は記事にあるように前途多難で、2014年までの完全撤退ができるかは不透明な情勢です。

アフガニスタンの情勢が安定化するにはタリバンとアルカイダの分断を図る戦略だけでなく、アフガンで栽培されているアヘンを撲滅することも必要です。

タリバンやアルカイダなどの武装組織は、国内で栽培されるアヘンが重要な資金源としているからです。

アフガンでアヘンが栽培される原因は、国内に雇用がなく、経済が崩壊したままであるためです。

アフガニスタン駐留軍が行っているのは武装組織の根絶だけでなく、こうした破たんした経済基盤の再建にも取り組まねばなりません。

今後のアフガン情勢の安定化には武装組織の動向だけでなく、経済再建もどの程度進められるかも焦点となってきます。